パスタを家で作ってほしい大きな理由がアマトリチャーナ にある。飲食店であまり見かけない。しかし、アマトリチャーナ ほどパスタ文化と歴史を語れるものは少ないので、ぜひ家庭で再現してルネサンス を起こしてほしい。
アマトリーチェ 村が発祥
アマトリチャーナ とはローマの北東約100kmに位置する山間の町「アマトリーチェ 村」が発祥のトマトソース。材料はトマト、グアンチャーレ(豚の頬肉の塩漬け) 、ペコリーノ・ロマーノ 、唐辛子、オリーブオイル、白ワイン を使って作る。これはアマトリーチェ 村の公式サイトで伝統の材料として紹介されている。ローマも同じラツィオ州 。アマトリチャーナ は州の伝統食品に認定されている。ローマ方言ではマトリチャーナ(matriciana)と呼ばれることから料理名が「アマトリチャーナ 」になった。発祥地とされるアマトリーチェ では、毎年8月の土日に、アマトリチャーナ を振る舞うフェスティバルを開催しているとか。
ローマ風のアマトリチャーナ は、グアンチャーレ、ペコリーノ・ロマーノ の3つを使ったトマトソース。さらに麺はブカティーニ を使う(後述)。玉ねぎを加える店もある。アマトリーチェ 村と違って唐辛子、オリーブオイル、白ワインは使わない。共通しているのがグアンチャーレ(もしくはパンチェッタ)の豚肉を使うこと。これは豚肉の美味しい脂を出汁にする豚骨ラーメンだから。そしてペコリーノ・ロマーノ を使うこと。このクセの強いチーズを使うことが重要。他のトマトパスタと大きく異なる2点。
アマトリチャーナ の起源は不明
アマトリチャーナ の起源は不明。そもそもイタリアでトマトソースが発明されたのは諸説ある。1つは1554年に医者アンドレ ア・マッテイオーリがトマトを使ったソースを作ったとする説、もう一つは18世紀後半とする説。一般的に食べられるようになったのは後者と考えられ、パスタにトマトソースが用いられたことを示す最古の文献は1790年にローマの料理人が書いたレシピ本。日本ではパスタ=トマトソースと思われているが、トマトソースの歴史は浅い。
グリーチャの後輩パスタ
一つ分かっていることは、アマトリチャーナ はグリーチャのトマトソース有バージョンであること。今では知名度 が逆転し、グリーチャのことを「白いアマトリチャーナ 」と呼ぶひともいる。ただし、アマトリチャーナ の方が後輩。グリーチャとともにアマトリチャーナ を作りパスタ文化とトマトの歴史を体験してほしい。
色んな有名シェフのアマトリチャーナ 論をまとめてみた。
肉に麺が負けないよう塩多めでパスタを茹でる(小林幸司シェフ)
玉葱は繊維に逆らってスライスして甘味を出す。炒めすぎない(小倉知巳シェフ)
刻んだローズマリー を入れることでイタリアン感が出る(小倉知巳シェフ)
白ワインはパンチェッタと玉ねぎを炒めるときに入れる(日高良美シェフ)
まずは本家本元アマトリーチェ 村の公式サイトに載っている伝統レシピを参考に作る(少しアレンジ)。アマトリーチェ 村のアマトリチャーナ はローマのようなブカティーニ を使わずスパゲティを使う。
2.0mmのスパゲティ:100g
パンチェッタ:30g
ムッティのトマトピューレ:大さじ4
ペコリーノ・ロマーノ :20g
カラブリア 唐辛子:1本
白ワイン:30ml
オリーブオイル:小さじ1
トマトピューレはトマト缶でOK。その場合は量を倍にして水分をしっかり飛ばす。豚肉は本来はグアンチャーレ だが、手に入りにくいのでパンチェッタで代用。オリーブオイルで炒めるのでパンチェッタのほうが合う。グアンチャーレはローマ伝統のレシピで紹介。ここにペコリーノ・ロマーノ の旨味をプラス。パルミジャーノ やグラナパダーノ(粉チーズ)では醤油ラーメンと豚骨ラーメンくらい違うのでペコリーノ・ロマーノ で。塩味が苦手な人は次から他のチーズで試してください。
パンチェッタをオリーブオイルで炒める
白ワインを入れてアルコールを飛ばす
唐辛子、トマトピューレを入れる
茹でたパスタと削ったペコリーノを混ぜる
皿に盛って追いペコリーノ・ロマーノ
パンチェッタをオリーブオイルで炒める。火力は弱火。オイルは小さじ1くらいでOK。
パンチェッタをカリカ リにするのが目的ではなく、汗をかかせて脂を引き出すことが目的。フランス料理でシュエ(汗をかかせる)という。この脂を出汁にするのがアマトリチャーナ が他のトマトパスタと違うところ。
パンチェッタを炒めている間にペコリーノ・ロマーノ を削っておく。これくらいからパスタを茹ではじめてOK。
パンチェッタから脂がしっかり出たら白ワインを入れてアルコールを飛ばす。
唐辛子、トマトピューレを入れる。唐辛子の辛さが苦手な方は、ちょっと炒めて取り出す。
茹でたパスタをトマトソースに絡ませる。
火を止めてからペコリーノを混ぜる。火を点けたままだとチーズが固まる。その場合は茹で汁を入れてカバー。
最後はお皿に盛って、追いペコリーノ・ロマーノ 。他のトマトパスタにはないアマトリチャーナ ならでは風味ができる。合わせるなら赤より白ワインがおすすめ。
本家アマトリチャーナ の食材・道具
材料が少ないのがローマ伝統のアマトリチャーナ 。材料が珍しいので日本のイタリアンで食べられない。だからこそ家庭で作る価値がある。YouTube で紹介されているのは正規の食材を使わないから、玉ねぎを入れたりコンソメ や調味料で誤魔化す。しかし、ローマ伝統アマトリチャーナ は驚くほど美味しい。Here We Go!
ブッカティー ニ:100g
グアンチャーレ:40g
ピノ ッキオのトマト缶:200cc
ペコリーノ・ロマーノ :30g
トマト缶はカットでもホールでもOK。パスタはブカティーニ 。うどんとラーメンくらい食感が違う。このときはグアンチャーレが手に入ったので、グアンチャーレを使う。アマトリチャーナ はグアンチャーレの脂の旨味を出汁にする。
ローマではブカティーニ を使う
ローマのアマトリチャーナ にはブカティーニ を使うのが基本。ブカティーニ (Bucatini)はローマではなくシチリア 発祥のロングパスタ。ブカティーニ ・アッラマトリチャーナ(Bucatini all'Amatriciana)と呼ばれる。極太のスパゲッティで太さは3.0mm以上。うどんのようなパスタと思ってもらえばいい。
名前はイタリア語で「穴」を意味する「ブーコ (buco) 」に由来。またはナポリ 語で「穴を開いた」を意味する “perciato” から、ペルチャテッリ (Perciatelli) と呼ばれることもある。ロングパスタと穴のあいた筒状のショートパスタの長所をあわせ持つことから、ブカティーニ はしっかりソースを纏うので重さのあるソースや多くの食材に合うことから特にローマで好まれているらしい。
メーカーも色々あるが、おすすめはラ・モリサーナ。 1912年にはじまり、イタリアの20州の州都で最も標高の高いモリーゼ州 カンポバッソ の標高700mの高地にある。ミネラルが豊富な水を使用。ファビオさんをはじめ、料理人の愛用者も多い。パッケージがオシャレなこともポイントが高い。
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グアンチャーレを弱火で炒める
ペコリーノを削っておく
カリカ リの直前でパスタを茹でる
トマト缶を入れてよく煮詰める
ブカティーニ を入れて混ぜる
火を止めてペコリーノを混ぜる
皿に盛って追いペコリーノで完成
オリーブオイルは使わず、グアンチャーレをネイキッドのまま鍋で炒める。中火・強火はNG。弱火でじっくりじっくりグアンチャーレの脂を引き出す。スエ(汗をかかせる)調理法。グアンチャーレにサウナに入ってもらう感覚。時短ではダメ。気は長く5分以上かける。それが美味しいアマトリチャーナ 。
グアンチャーレがサウナに入っている間にチーズを削っておく。最後にも削って大雪を降らせるので少し残しておきましょう。冬のファンタジー が待っている。削り終わってからパスタを茹で始める。
見て、見て、見て(懐かしのマーフィー岡田 )。最低でもこれくらいカリカ リ梅にして、脂を出す。もっと汗を出させても大丈夫。
パスタが茹で上がる5分くらい前にトマト缶を入れる。水分をぶっ飛びカードするため。トマトを潰しつつ、鍋底についたグアンチャーレの旨味をゴムヘラなどで、こそぎ出す。
こんな感じで水分を飛ばす。もっと飛ばしたいところ。これでグアンチャーレの脂の旨味とトマトの旨味が吸収合併する。
茹で上がったアマトリチャーナ をダイブさせて、よ〜く混ぜる。
ブカティーニ にソースが絡んだら削ったペコリーノを混ぜる。鍋を振ってよく混ぜる。
お皿に盛ったら、日本海 の豪雪くらいペコリーノ・ロマーノ の大雪を降らせる。信じられないくらい美味しくなるので遠慮はだめ。↓伝統アマトリチャーナ の食材↓
伝統のアマトリチャーナ を作ったらアレンジのレシピにも挑戦しよう。日本の飲食店では玉ねぎやローズマリー の旨味を援護射撃する。色んなシェフのレシピを混ぜ合わせたアマトリチャーナ を紹介。ローズマリー の風味が効いて家庭でローマ旅行ができる。
ブカティーニ :100g
玉ねぎ:1/4
ニンニク:1片
パンチェッタ:30g
トマトピューレ:大さじ5
白ワイン:30ml
ペコリーノ・ロマーノ :20g
ローズマリー :1束
ブカティーニ が無ければ普通のスパゲティでOK。パンチェッタもなければベーコンでも良い。アマトリチャーナ の個性を出すためにチーズはペコリーノ・ロマーノ を使ってほしいがパルミジャーノ でも大丈夫。奥田政行シェフはローズマリー ではなくタイムを使い、最後にチーズと一緒にバターを混ぜてコクを出す。
玉ねぎをスライス、ニンニクをみじん切り
ローズマリー の葉をちぎって細かく刻む
パンチェッタ、ニンニク、玉ねぎを炒める
焼けたら白ワインを入れる
トマトピューレ、ローズマリー の茎を入れる
ローズマリー の茎を取り出す
パスタを和え、火を止めてチーズを混ぜる
ローズマリー の葉を加えて皿に盛る
玉ねぎを繊維に盛ってスライス。そのほうが甘味が出る。逆にシャキシャキ感が欲しいときは繊維に沿って切る。ニンニクは粗くみじん切り
ローズマリー の葉をちぎって細かく刻む。これで一気にヨーロッパ感が出る。生が無ければ乾燥でもOK。
パンチェッタ、ニンニク、玉ねぎを炒める。玉ねぎとニンニクに塩を一振り。これくらいからパスタを茹ではじめる。
パンチェッタが焼けたら白ワインを30ml入れてアルコールを飛ばす。
白ワインが蒸発したらトマトピューレ、ローズマリー の茎を入れる。
トマトが煮詰まってきたらローズマリー の茎を取り出す。
パスタを和える。水気が足りなけりゃ茹で汁を足す。
火を止めてチーズを混ぜる。チーズが固まってしまったら茹で汁を足す。
刻んだローズマリー の葉を加える。混ぜなくてOK。
そのまま皿に盛って完成。
イタリアではバルサミコ酢 がブーム
最近ではイタリア本国でも色んなバリエーションが存在し、保守的といわれるイタリア人も先鋭的なメニューに挑戦している。パンチェッタを炒めるときにオリーブオイルではなく、バルサミコ酢 と白ワインビネガーを少量かける。アマトリチャーナ は甘さが売りだが、ちょっとアダルトな味付けに変わる。エロかっこいいパスタが食べたい方はお試しを。カラブリア 産の唐辛子を1つ入れるとキレも増す。アマトリチャーナ 2.0。アマトリチャーナ の材料は無限大。
↓↓アマトリチャーナ の食材↓↓
アマトリチャーナ は前述のブカティーニ のイメージが強いが、イタリアのローマではショートパスタで提供する店も多い。日本人はショートパスタ=サラダ記念日みたいなイメージだが、イタリアではショートパスタ党も珍しくない。見た目の楽しさ、食感などロバート・デ・ニーロ のように色んなキャラを見せてくれる。
リガトーニ :100g
トマトピューレ:200g(1瓶)
パンチェッタ:40g
白ワインビネガー:大さじ1
カラブリア 産の唐辛子:1本
ペコリーノ・ロマーノ :思ってる量の3倍
ショートパスタはリガトーニ の半分のサイズのメッツェマニケ やペンネ 、フジッリ など何でもOK。豚肉はグアンチャーレを使いたかったが、どこにも売っていない。代わりにパンチェッタを代打に送った。白ワインビネガーは本来は普通の白ワインを100cc使う。家にビネガーがあったので使った。カラブリア 産の唐辛子は1本でも強烈なインパク ト。辛いものが苦手な方は無くてもOK。トマトピューレは完熟トマトを裏ごしして煮詰めたもの。最初に紹介したトマト缶はに比べてトマトの旨みが凝縮されている。リコピン 大魔王に向いている。
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パンチェッタを弱火で炒める(油なし)
焦がさず脂をじっくり引き出す
脂がたっぷり出たら唐辛子、ビネガーを加える
パスタを茹ではじめる
アルコールが飛んだらトマトピューレを入れる
ピューレの水分がなくなるまで煮詰める
茹でたパスタをダイブさせ混ぜる
皿に盛ってペコリーノの大雪を降らせる
パンチェッタを炒めるときは弱火でじっくり。慌てない慌てない。一休さん が大事。
フライパンの底にパンチェッタの旨みがこびりつくまで炒める。
白ワインビネガーを入れるときはフライパンの底の旨みをしっかり吸い込ませる。木べらでこすると良い。
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白ワインビネガーのアルコールが飛んだらトマトピューレを入れる。まだ水分が多い。アマトリチャーナ を作るときはトマトエキスの量が多いので深型の鍋がおすすめ。
水分が飛ぶまでしっかり煮詰めるのがポイント。
ショートパスタは洞窟の中に水分が残りやすいので、しっかりと切る。
お皿に盛ったらペコリーノチーズをたっぷり削る。辛いのが苦手な人やトマトの酸味が苦手な人は気持ち多めに。チーズを入れすぎると逆に甘くなるのでオリーブオイルを回しかけて緩和させる友好条約もおすすめ。
↓リガトーニ のアマトリチャーナ の食材↓
ワンパンで作るアマトリチャーナ 。ベーコンと玉ねぎをマッターホルン させる。
バリラ 1.6mm:100g
ベーコン:100g
玉ねぎ:1/2個
にんにく:1片
カラブリア 唐辛子:1本
白ワイン:50ml
水:150ml
トマトピューレ:200ml
パルミジャーノ :20g
白ワインは料理酒でOK。ベーコンや玉ねぎの量は少なくしてOK。
ベーコンを短冊切り、玉ねぎはスライス
ベーコンをカリカ リまで炒める
潰したニンニク、唐辛子を入れる
玉ねぎ入れて塩、白ワインを入れる
具を避けてトマピュー、水、塩を沸かす
パスタを茹でたら具材を戻す
火を止めてチーズを削る
皿に盛って追いチーズ
食べやすい大きさに切ったベーコンをオリーブオイルで炒める。カリカ リ梅になるまで炒める。
カリカ リ梅ベーコンになってきたら少量のオリーブオイルを足してニンニクと唐辛子を炒める。
ニンニクの香りが立ってきたらスライスした玉ねぎを入れて全体に塩を振る。
玉ねぎがしんなりしたら白ワイン50mlを入れてフライパンの底についた旨味(焦げ)をしっかりとる。
パスタの皿に具材を避けて水150ml、トマトピューレ200ml、塩を多めに沸かしてパスタを茹でる。トマトの酸味が強いので塩は多めでOK。
パスタが茹で上がったら具材を戻してよく混ぜる。
火を止めてチーズを削る。火を入れたままだとチーズが固まるので。
マッターホルン をイメージして高く皿に盛って追いチーズ。
赤ワインと恐ろしいほど合うので、お試しあれ。
アマトリチャーナ (ワンパン)の食材・道具
バルサミコ酢 とミニトマト の酸味をたっぷり効かせた夏のアマトリチャーナ 。イタリア語で「Amatriciana estiva」。estiva(エス ティー ヴァ)は「夏の」という意味。これで夏を追い越せる。春夏秋冬、通年でもこのレシピで作りたい。
レシピの参考にしたマルコさんは麺を普通のスパゲティ、肉はベーコンを使った。ミニトマト はアイコ(アメフトボールみたいな形)が甘味があってアマトリチャーナ におすすめ。パルミジャーノ はペコリーノ・ロマーノ があればベスト。
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材料も作り方もかなり変えているけど、イメージはマルコさんの動画を参考に。
ミニトマト を半分に切る
パンチェッタを炒める
バルサミコ酢 、ミニトマト 、黒胡椒
茹でたパスタを和えてチーズを削る
お皿に盛って完成
ミニトマト を半分にカット。
雀の涙ほどのオリーブオイルでパンチェッタを炒める。
パンチェッタに火が通ったらバルサミコ酢 を小さじ1入れる。
ミニトマト を入れて軽く塩をする。
黒胡椒を想像の5倍くらいヌートバーする。
トマトを潰してソースを抽出する。
茹でたパスタを入れて絡める。
火を止めてからチーズを削る。先に削っておいてもいい。火を止めないとチーズがカッチカチに固まってしまう。
お皿に盛って完成。追いチーズをしてもいいが、まずは酸味たっぷりのままで味わってほしい。
夏のアマトリチャーナ の道具
パスタは道具にこだわるほど美味しくなる、楽しくなる、愛おしくなる
最後までご覧いただき、あリガトーニ 。