誰もが食べたことのある「カルボナーラ」や「アマトリチャーナ(トマトパスタ)」。しかし、本当のカルボナーラやトマトパスタを食べたことのある日本人は少ない。なぜなら「グアンチャーレ」が入ったパスタは日本で希少だから。このグアンチャーレこそ、カルボナーラやアマトリチャーナの心臓。そして、飲食店より家庭のほうが美味しいパスタを食べられる秘訣が隠されている。
グアンチャーレとは
グアンチャーレ(guanciale)とは豚の頬肉を塩漬けにして2〜3週間熟成させたもの。イタリア語で「le guanciale」は「枕」の意味。「頬」を意味する「guancia」から来ている。脂身が多く、フライパンで焼いて脂を抽出してパスタの出汁にする。イタリアにおいては必ずと言っていいほどカルボナーラやアマトリチャーナにはグアンチャーレが使われる。理由は後で説明する。日本ではベーコンが浸透しているが、イタリア人の中には人生でベーコンを食べたことがない人も多く存在する。それほどグアンチャーレは重要な食材。
パンチェッタやベーコンとの違い
パンチェッタ(pancetta)は、豚バラのブロック肉を塩漬けにして熟成させたもの。名前の由来はイタリア語で「おなか」の意味「pancia」から。ほっぺた肉であるグアンチャーレとは部位が異なる。
パンチェッタは「生ベーコン」とも呼ばれるように、ベーコンとの違いは「燻製しない」こと。ベーコンも豚バラ肉を熟成させるが、その後に「燻製」の工程が入る。燻製することで塩抜きれる一方、パンチェッタはベーコンに比べて塩分が強い。
- グアンチャーレ:脂が多い
- パンチェッタ:塩味が強い
- ベーコン:スモーキーな香りが強い
パンチェッタとベーコンの「バラ」は最も日本でお世話になっている部位。豚の角煮やラーメンの焼豚(チャーシュー)。骨付きのバラ肉はスペアリブと呼ばれる。
なぜグアンチャーレが必須なのか?
本物は豚骨ラーメンだから
ここで核心に入る。なぜグアンチャーレを使うべきなのか?理由はカルボナーラやアマトリチャーナ、グリーチャといったパスタは、グアンチャーレの脂を出汁にする「豚骨ラーメン」だから。
日本のパスタは「塩ラーメン」
ベーコンやパンチェッタを使うパスタも美味しい。ただし、豚の脂が少なく、塩味が強いので、いわば「塩ラーメン」。美味しいけど別の料理。だからイタリア人はグアンチャーレを使わないカルボナーラは認めない。頑固でも保守的でもない。実際に食べてみると、日本人が知っているカルボナーラとは全然違う味わいになる。一度グアンチャーレを使ってパスタを作って欲しい。
グアンチャーレを使ったパスタ
カルボナーラ
グアンチャーレを使ったパスタの代名詞はカルボナーラ。ぶっちゃけ日本人が論争している「生クリームを使うべきか」「卵は全卵か卵黄か」の不毛な言い争いはどっちでもいい。食感やマイルドさが変わるくらいで、カルボナーラの心臓はグアンチャーレの出汁だから。伝統的なカルボナーラのレシピも紹介したブログがあるので読んでほしい。
グリーチャ
グアンチャーレの文化、歴史を味わうならカルボナーラよりもグリーチャ。「グリーチャ(gricia)」はイタリア中部に位置するグリシャーノ村から由来。かつてローマの羊飼いは夏の放牧の時期にグリシャーノ村にやってきて、村人はグアンチャーレを、羊飼いはペコリーノチーズを物々交換した。その2つを合わせて誕生したのがグリーチャ。人と人との交流が生んだ、温かい歴史のパスタ。
材料は2つだけでいい。シンプルだが爆発的に美味しい。
アマトリチャーナ
アマトリチャーナも日本の飲食点で食べられるが、グアンチャーレを使う店は少ない。YouTubeで紹介されているレシピはグアンチャーレを使わないから、玉ねぎを入れたりコンソメや調味料で誤魔化す。しかし、グアンチャーレを使ったローマ伝統アマトリチャーナは驚くほど美味しい。材料も3つだけ。
この3つだけで至高のトマトパスタが作れるので、ぜひ試して欲しい。
最後までご覧いただき、あリガトーニ。