イタリアで修行するシェフが必ず作る、まかないパスタ。チャチャっと作る手抜きパスタが高価な食材や手の込んだパスタを超えることがある。パスタの原点にして摩訶不思議アドベンチャー。パスタの奇跡をお見せしよう。
- パスタ・ビアンカとは
- パスタ・ビアンカ(チーズ)
- パスタ・ビアンカ(魚醤)
- パスタ・ビアンカ(バター)
- 茹で論のパスタ・ビアンカ
- ショートパスタ・ビアンカ(白胡椒)
- ショートパスタ・ビアンカ(バター醤油)
- 生パスタ・ピアンカ(ニンニク)
パスタ・ビアンカとは
パスタ・ビアンカ(pasta bianca)はイタリア語で「白いパスタ」の意味。ビアンカは「白」。イタリアでは「ビアンコ」とも言う。その実はチーズとオリーブオイルを和えるだけのパスタ。日本の白ご飯、白米と同じ。かけうどん、素うどんと同じ。「素パスタ」と言ってもいい。魚沼産のコシヒカリは何もかけないほうが美味いように、パスタ・ビアンカもチーズとオリーブオイルだけで目ん玉が飛び出しそうなくらい美味い。
家庭のイタリアン・スパゲティ
パスタ・ビアンカはイタリアでは朝ご飯にしたり、初めて子どもが食べるパスタにすることも多い。調理法はフライパンにオリーブオイルをひいて、茹でたパスタ、塩と黒胡椒で味をつけ混ぜるのが主流。チーズはお好み。日本と違ってショートパスタも多い。「プレーン・パスタ」「ホワイト・パスタ」と呼ばれることもあるが、「パスタ・ビアンカ」がオシャレでかっこいい。
美味しさのコツは塩と温度
パスタ・ビアンカを美味しく作るコツは麺を茹でる温度と塩の量。まず温度。グツグツ煮えたぎった地獄にしない。ポコポコ気泡が出るくらい。火力は中火から強火の間。パスタは90℃以上に熱されると麺肌がボロボロになってデンプン質が外に出る。トマトパスタやクリームパスタならソースと絡みやすくなるが、ペペロンチーノやパスタ・ビアンカなど麺の存在感が主役のオイル系パスタは逆効果。麺にハリやコシが無くなり、ツルツルの喉ごしも失われる。日本の水は軟水なので水分が浸透しやすく麺がボロボロになりやすい。逆にヨーロッパの硬水はコシがでやすいので、現地でパスタを食べたほうが美味しい理由の一つ。塩茹でするときはパスタが気持ち良くなる温泉を意識しよう。ポコポコ湧くくらいにする。五右衛門風呂ではなく温泉。
塩分は多めに
もう一つのコツが、塩を多めに。そもそも麺を塩で茹でるのは、パスタの中に塩を入れてコシとハリを生むため。塩なしの湯で茹でるとパスタの体内が水分だけになってブヨブヨ、ボソボソの肥満パスタになる。パスタ・ビアンカは塩を多めにして麺を筋肉質にする。塩ラーメンを作るつもりで。塩分濃度は1%前後では意味がない。できるだけ1.5%以上。ちょっとショッパイと思うくらいがジャストミート。塩マシマシで美味しいパスタ・ビアンカを作ろう。
裏技として「にがり」を使うのもアリ
そこまでする必要はないが、何がなんでも美味しく作りたい場合は茹で汁に「本にがり」を入れる。スーパーで売ってる。「にがり」は海水から塩を取った後に残った液体。豆腐を作るときの凝固剤としても使われる。日本の軟水に本にがりを3〜5滴くらい入れるだけで硬水に近づくのでヨーロッパに近い茹で汁になる。硬い水で茹でることで麺にハリとコシが生まれるのでパスタ・ビアンカに向いている。
パスタ・ビアンカ(チーズ)
パスタ・ビアンカは数種類ある。まずは王道のオリーブオイルとチーズと塩だけ。百聞は一見に如かず。Here We Go.
パスタ・ビアンカ(チーズ)の材料
- バリラ1.6mm:100g
- オリーブオイル:3周半くらい
- グラナ・パダーノ:仕上げにたっぷり
- モティアの海塩:テキトー
パスタは好きなもの使えばよろし。太麺でも細麺でもいい。ただしイケ麺を使おう。安くて美味しくないものはブラックアウト。オリーブオイルはエキストラバージンなら何でもいい。風味が大事なのでピュアはホワイトアウト。チーズもなんでもいい。ただし削るもの。最初から粉のものは美味しくないし、直前に削らないと風味が出ない。塩はモティアを愛用しているけど、伯方の塩でもいい。
パスタ・ビアンカ(チーズ)のレシピ
- パスタを塩茹でにする
- ボウルをスタンバイしておく
- 茹でたパスタをボウルに入れる
- オリーブオイルを3周半回しかける
- 皿に盛ってチーズを削って完成
パスタを塩茹でにする。塩の量はお好みで。いつも1リットルに大さじ1くらい入れている。塩魔大王なんで、吾輩。
パスタを茹でている間にボウルとゴムヘラをスタンバイ。フライパン要らずのノーパンパスタ。
茹でたパスタをボウルに入れてオリーブオイルを3周半くらいトリプルアクセル。ゴムヘラでよく混ぜる。このときオリーブオイルの芳香がフワッとくる。これが源田壮亮の守備くらいたまらん。
オリーブオイルをコーティングしたら皿にアート引越センター。
美味しいチーズを削ってフィニッシュ。フォークでクルクル混ぜながら食べる。塩の効いたパスタの麺の旨み、オリーブオイルの香り、チーズのコクが合わさって宝石に変わる。これ以上なにも足さず、これ以上なにも引かないでください(天気の子)
パスタ・ビアンカ(チーズ)の食材
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パスタ・ビアンカ(魚醤)
ちょっと変化球のパスタ・ビアンカ。塩茹でしたパスタに魚醤をかける。醤油ご飯みたいな感じ。醤油つかったら「白ちゃうやん」というツッコミはシャラップ。
パスタ・ビアンカ(魚醤)の材料
パスタは魚系に合うリングイネを使ったが何でもOK。マンチーニは麺力がハンパなく強いので、シンプルなパスタに合う。魚醤はナンプラーじゃなく、鮎の魚醤やコラトゥーラなど何でもOK。
魚醤がなければ醤油でもOK。
パスタ・ビアンカ(魚醤)のレシピ
- パスタを塩茹でする
- オリーブオイル、魚醤と和える
- 皿に盛ってチーズを削る
塩茹でしたパスタにオリーブオイル3周半、ナンプラーを小さじ2を混ぜる。
お皿に盛ってチーズを混ぜて完成。
パスタ・ビアンカ(魚醤)の食材
コラトゥーラのパスタ・ビアンカも最高
コラトゥーラを小さじ1かけるだけでも最強に美味い。チーズなしでも最高のパスタ・ビアンカになる。
パスタ・ビアンカ(バター)
もういっちょ。パスタ・ビアンカはバターと和えるものもある。本来、バターを和えるパスタは「アル・ブーロ」というが、パスタ・ビアンカは広角打法。なんでもあり。
パスタ・ビアンカ(バター)の材料
- バリラ1.6mm:100g
- カルピス社のバター:15gくらい
- モティアの海塩:テキトー
バターは有塩、無塩のどちらでもOK。塩魔大王は当然、有塩。有塩は遊園地。無塩は無縁坂。パスタもなんでもいい。
パスタ・ビアンカ(バター)のレシピ
- パスタを塩茹でにする
- 茹でたパスタをボウルに入れる
- バターを入れてグルグル混ぜる
ボウルを用意したが、直接お皿に盛ってもOK。
茹でたパスタにバターを入れて混ぜるだけ。
塩のキレとバターのまろやかさのコラボレーション。スタローンとシュワルツネッガーが組むエクスペンダブルズ。
味変ドリクスするなら胡椒をかけよう。なくても美味い。パスタ・ビアンカを応用したのがカチョエペペ。
パスタ・ビアンカ(バター)の食材
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茹で論のパスタ・ビアンカ
パスタの世界に「茹で論」があるのをご存知か。山形にある『アル・ケッチァーノ』の奥田政行シェフの理論。かなり塩分多めでパスタを茹でて(登頂)、素早くお湯ですすぐ(下山)。「登頂したら天候が荒れる前にサッサと下山」の登山と同じ。スピード勝負。塩分多めで茹でることでツルっ、プリっ、ポンっの麺になる。
茹で論パスタ・ビアンカの材料
麺はなんでもいい。チーズも削るものならOK。オリーブオイルはなんでもいい。写真はモナコ王室ご用達。奥田シェフの愛用。重要なのは塩。2.7%の濃度にする。
塩、山盛り。大さじ2弱。1リットルのお湯で茹でるなら27g。2リットルで茹でるなら倍の54g。
茹で論パスタ・ビアンカのレシピ
- 2.7%の塩湯でパスタを茹でる
- 茹でたパスタをお湯でゆすぐ
- ボウルで麺とオリーブオイルを混ぜる
- お皿に盛ってチーズを削る
パスタを茹でる用のお湯を用意しておく。
2.7%の塩分濃度でパスタを茹でる。
サッとすすぐ。1秒未満でいい。茹ですぎると、せっかくの塩が取れる。
ボウルに移してオリーブオイルを3周半して混ぜる。
お皿に盛ってチーズを削るって完成。
ショートパスタ・ビアンカ(白胡椒)
パスタ・ビアンカはショートパスタもあり。なんならショートパスタのほうが美味いかもしれん。
白胡椒パスタ・ビアンカの材料
- 雪結晶パスタ:100g
- オリーブオイル:3週半
- グラナ・パダーノ:20gくらい
- 白胡椒:テキトー
満を持しての登場「雪結晶パスタ」。パスタ・ビアンカのためにあるようなしショートパスタ。山形県産。今回はペッパー警部をプラス。ただし黒胡椒のヌートバーだとパスタ・ビアンカにならないので、ホワイトペッパー警部。ホワイト・ヌートバーを降臨。
白胡椒パスタ・ビアンカのレシピ
- パスタを茹でる
- ホワイトペッパーを潰す
- チーズを削っておく
- パスタをオリーブオイルで和える
- 皿に盛って追いチーズ、白胡椒
雪結晶パスタを茹でる。
白胡椒をターナーなどでクラッシュ・ロワイヤル。
時間を持て余すのでチーズを削っておく。
茹でたパスタを混ぜてオリーブオイルをトリプルアクセル。
皿に盛って追いチーズ、最後に白胡椒をパラパラ粉雪してレミオロメン。
ショートパスタ・ビアンカの食材
ショートパスタ・ビアンカ(バター醤油)
正真正銘のラスト・ピクチャー・ショー。バター醤油のパスタ・ビアンカ。こんなん旨いに決まってるやん。八百長パスタ。
ショートパスタ・ビアンカの材料
- コンキリエ:100g
- カルピス社のバター:15g
- 鮎の魚醤:小さじ1
パスタは「貝の形」という意味のコンキリエを使うが、これも何でもOK。なんでもないようなことが幸せだったと思う。鮎の魚醤は少量なのでコラトゥーラでも醤油でもOK。
ショートパスタ・ビアンカのレシピ
- パスタを茹でる
- バターをボウルにスタンバイ
- 茹でたパスタをバター醤油と混ぜる
もはやレシピ要らんやろ?って感じ。好きにやっちゃってーby木村拓哉(ギャツビーのCMより)
パスタを茹でてる間にボウルにバターをスタンバッておく。
茹でたショートパスタを絡めまくる。
皿にもってフィニッシュ。
ショートパスタ・ビアンカ(バター醤油)の食材
生パスタ・ピアンカ(ニンニク)
最後はニンニクを使ったパスタ・ビアンカ。ニンニクも白なのでパスタ・ビアンカにできる。ニンニク・マッドネスには垂涎のパスタ・ビアンカ。
生パスタ・ピアンカの材料
- 生パスタ:120g
- 青森県産のニンニク:1/2片
- オリーブオイル:7週分
- モティアの塩:茹で用(お好みで)
生パスタで試してみたけどモチモチの食感が好きな人におすすめ。普通のロングパスでいい。ニンニクは青森県産がおすすめ。すりおろすので、中国産やスペイン産はエグ味が強くなる。もちろん、それが好きな人はなんでもよし。
写真にはないが、おすすめはチーズを削ること。圧倒的に美味しくなるので味変でやってほしい。
生パスタ・ピアンカのレシピ
- 生パスタを茹でる
- 茹でたパスタを皿に乗せる
- オリーブオイルを回しかける
- ニンニクをすりおろす
生パスタを茹でている間に皿とニンニクを削るマイクロプレーン、包丁なんか面倒くさいので料理バサミで皮を切っちゃう。
茹でたパスタを皿に盛ったらオリーブオイルをマリカーくらい何周も回しかける。
マイクロプレーンでニンニクをすりおろして、よく混ぜる。
追いオリーブオイルで完成。まずは、このまま試食。ニンニクのパンチが凄いから。
おすすめはチーズを削ること。500億倍、美味しくなる。
生パスタ・ピアンカ(ニンニク)の食材
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最後までご覧いただき、あリガトーニ。