玉ねぎが大好きである。会社員時代は「まいばすけっと」の八王子ラーメンのカップ麺のお世話になっていた。八王子ラーメンとはタマネギたっぷりのラーメン。ローランドやタッキー(滝沢秀明)の出身地。玉ねぎのシャキシャキだけで昼を越えられる。昼はカップ麺、夜は家でパスタを作る完全な麺ヘラと化していた。
玉ねぎパスタ(貧乏人のパスタ)の発祥
貧乏人の玉ねぎパスタの発祥は北イタリア。ゴンドラの街・ヴェネツィアで有名なヴェネト州といわれている。ヴェネト州はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台ヴェローナでも知られる。金持ちのイメージが強いが、どこの地域にも貧乏人は存在する。かくいう自分も新宿に10年住んでおきながら低所得者層の立派な一員。貧乏人の玉ねぎパスタ万歳である。
本名はビーゴリ・イン・サルサ
貧乏人の玉ねぎパスタにはモデルがいる。現地で「ビーゴリ・イン・サルサ(Bigoli in Salsa)」の名前で呼ばれるパスタ。カッチョええ。ビーゴリはチューブのようなロングパスタで見た目どおり、ツルツルではなくボテっとしている。「トルキオ」という肉をミンチするような伝統的な手動パスタマシンで作る。「サルサ」は「ソース」の意味。飴色になるまで炒めた玉ねぎにアンチョビを加えて作るソースが主流。材料も高ければ手間もかかる。「貧乏人にそんな暇あらへんで」とツッコミたいところである。
玉ねぎの切り方の豆知識
玉ねぎをスライスするとき2パターンあるのをご存知か?シャキシャキの食感を残したい場合は繊維に沿って切る。玉ねぎの甘みを引き出したいなら繊維に逆らって切る。繊維を壊すことで玉ねぎの甘味がジュワッとウルトラマンのように飛び出す。
貧乏人の玉ねぎパスタ(スパゲッティ)
まずは誰でも簡単に作れるロングパスタ(スパゲティ)のバージョンから。あとでビーゴリを使った伝統的なレシピやショートパスタも紹介するのでみてね。
玉ねぎ貧乏パスタの材料
- マンチーニ1.8mm:100g
- 玉ねぎ:2個(小ぶりのもの)
- アンチョビ:2フィレ
- カルピス社のバター:15g
- オリーブオイル:ひと回し
貧乏人の玉ねぎパスタといいつつ、1個1個の材料は高い。イタリア人もいい加減なもの。けど、気にせず作ろう。超美味しいから。パスタは太麺がおすすめだけど細麺でもOK。玉ねぎの量はお好みで。
玉ねぎ貧乏パスタのレシピ
- 玉ねぎをざっくりスライス
- 600Wで5分レンチン
- バターで玉ねぎを炒める
- 塩を一振りする
- 水を少しずつ入れて鍋底の焦げをとる
- パスタを茹ではじめる
- 茹で上がり30秒前にアンチョビを入れる
- 茹でたパスタを混ぜる
- オリーブオイルをひとまわし
- 皿に盛ってお好みで胡椒をヌートバー
玉ねぎを全部スライスする。繊維に沿っても逆らっても、お好みでOK。
時短のために600Wで5分レンチン。文明の利器は使いたい。レンチンしなければ30分くらい炒めるのに時間がかかる。
バターを溶かして玉ねぎを中火で焼いていく。塩をひとつまみ振って水分を追い出す。
玉ねぎを焦げつかせる。あまり動かさない。慌てない慌てない。一休さんの境地。水を少しずつ入れて鍋底の旨味をこそぎ出す。ここからパスタを茹ではじめる。
玉ねぎがまっ茶色になってパスタが茹で上がる30秒前になったら茹で汁を一杯分だけ入れ、アンチョビを2フィレ溶かし込む。
茹でたパスタを混ぜて、火を止めてからオリーブオイルを回しかける。
お皿に盛って胡椒をヌートバー。20ヌートバーくらいしよう。八王子市民の方は全員、作ってください🎶
玉ねぎ貧乏パスタの食材
ビーゴリ・イン・サルサ
いよいよ真打登場。ヴェネト州の郷土パスタ。現地の貧乏人の玉ねぎパスタ、ビーゴリ・イン・サルサ。
ビーゴリ・イン・サルサの材料
- ビーゴリ:100g
- 玉ねぎ:1個
- アンチョビ:1フィレ
- コラトゥーラ:小さじ1
- イタリアンパセリ:飾り
もちろん最重要はビーゴリ。通販でも売っているところは珍しく、イタリアの輸入食品店であればラッキー。最悪、太麺にして玉ねぎとアンチョビがあればOK。隠し味としてコラトゥーラ(イタリアの魚醤)を使う。無ければ鮎の魚醤か、普通の醤油でもOK。最後に飾るイタリアンパセリはお好みで。
ビーゴリ・イン・サルサのレシピ
- イタパセをみじん切り
- 玉ねぎを薄〜くスライス
- 玉ねぎをオリーブオイルで炒める
- しんなりしたらアンチョビ入れる
- 茹で汁50cc入れて蓋して15分
- ビーゴリを茹でて混ぜる
- 火を止めてイタパセ、コラトゥーラ
- お皿に盛って残りのイタパセを飾る
イタリアンパセリは茎ごと刻む。日本のイタパセは茎が柔らかく風味が詰まっている。絶対に捨てないこと。
玉ねぎは甘味を引き出すので、繊維に逆らってスライスする。今回は食感を残さずソースにするので薄〜く、薄〜く限界ギリギリchopに切る。
フライパンにオリーブオイルを引いて玉ねぎを中火で炒める。塩をひとつまみ。
玉ねぎがしんなりしたら、アンチョビを入れて混ぜる。
しっかり混ぜてさらに炒める。フライパンについた焦げはあとで取れるので焦るべからず。
アンチョビが混ざり切ったら茹で汁を50cc入れて蓋をする。しょっぱいのが苦手な人は茹で汁ではなく水にしよう。
15分間、煮詰めたのが成れの果て。イタリアでは20分くらいコトコト煮込むらしい。どんだけ暇やねん、という感じだが、だからこそ美味しくなる。
茹でたビーゴリを入れて、よく混ぜる。
火を止めてコラトゥーラ小さじ1、イタリアンパセリの一部を入れて混ぜる。
お皿に盛って残りのイタリアンパセリを飾る。ボサっとしたビーゴリと濃厚な玉ねぎソースは合う。何よりヴェネチアに行かなくても世界は広がる。
ビーゴリ・イン・サルサの食材・道具
玉ねぎの貧乏ショートパスタ
お調子者のベリッシモさんいわく「馬鹿もできるイタリアン」の登場。料理で面倒くさい工程の筆頭が玉ねぎのみじん切り。自分は平気だが、目が痛くなる人も多い。しかし、苦労した先に大地の甘さが待っている。
玉ねぎの貧乏ショートパスタの材料
- カサレッチェ:100g(他のパスタでOK)
- 玉ねぎ:1/2個
- アンチョビ:2フィレ
- 黒胡椒:たっぷりプリプリ
ショートパスタはなんでもOK。ペンネやフジッリなど何でもござれ。今回使ったのがS字カーブの形をしたショートパスタ「カサレッチェ」。イタリア語で「家庭の」「手作りの」という意味。やさしくなれるショートパスタ。材料はこれだけで超絶に美味しいパスタができる。
玉ねぎのショートパスタのレシピ
- 玉ねぎをみじん切りにする
- フライパンで炒める
- アンチョビも炒める
- 茹で汁を100cc加える
- 茹で上がったパスタを混ぜる
- 胡椒をたっぷりかける
- 皿に盛って完成
考案者のベリッシモさん曰く「馬鹿もできるパスタ」。技術力0。ただし、じっくり時間をかける。時短じゃねえよ。料理は子育てと同じ。旨味が成長するまで待つべし。
親の仇のように、玉ねぎを切り刻む。包丁を高村刃物にしてから玉ねぎのみじん切りが楽になった。ドラマ『グランメゾン東京』やプライベートでも木村拓哉が愛用しているメーカー。斬れ味が全然違う。
オリーブオイルを引いて刻んだ玉ねぎを弱火で炒める。時間はかかるが、我慢我慢。慌てない慌てない。子どもの成長を待つように、じっくり玉ねぎの甘みを引き出す。
玉ねぎがしんなりしてきたらアンチョビ 2フィレを炒める。木ヘラやゴムヘラで潰す。
茹で汁を100ccほど加えて煮る。
ショートパスタが茹で上がったらフライパンに入れてマンテカトゥーラ(よく混ぜる)。ヌートバー並に胡椒をたっぷりプリプリかけてお皿に盛って完成🎶
↓玉ねぎの貧乏ショートパスタの食材↓
スパゲティ・イン・サルサ
これまでの貧乏人の玉ねぎパスタは、玉ねぎが主役。このスパゲティ・イン・サルサはアンチョビが主役。アンチョビの旨味、潜在能力を玉ねぎが引き出す。ドラゴンボールの超神水。
スパゲティ・イン・サルサの材料
- 1.9mm以上のスパゲティ:100g
- 玉ねぎ:1/2個(100gくらい)
- アンチョビ:10g(4フィレくらい)
- 黒胡椒:たっぷり
ビーゴリの代わりにスパゲティを使う。できるだけ太麺で。今回のスパゲティ・イン・サルサは玉ねぎの1/10のアンチョビを使う。かなり多め。
スパゲティ・イン・サルサのレシピ
- 玉ねぎを繊維に逆らって切る
- 玉ねぎ、アンチョビに水を入れて炒める
- 蓋をして20〜30分、煮詰める
- パスタを茹でる
- フライパンに水を引きサルサを炒める
- 茹でたパスタを混ぜる
- 皿に盛って胡椒、オリーブオイルをかける
玉ねぎを繊維に逆らって切る。甘みを引き出す。
フライパンに水を大さじ1くらい引いて玉ねぎ、アンチョビを炒める。
鍋が温まるまでは強火で。
沸騰したら弱火にしてビフォーアフターを楽しみに蓋する。
30分後がこんな感じ。パスタを茹でる。先に茹でておいてもOK。
フライパンに水を小さじ2くらい引いてサルサを炒める。
茹でたパスタを混ぜてグルグル混ぜる。
皿に盛って胡椒をヌートバーしてオリーブオイルを回しかける。
スパゲティ・イン・サルサの食材
貧乏人の新玉ねぎパスタ(バジル)
玉ねぎより柔らかい新玉ねぎを使ったパスタ。バジルを添える。「瞳とじて」のような爽快感。
貧乏人の新玉ねぎパスタの材料
パスタは太麺がおすすめ。アンチョビと新玉ねぎのパンチが強めなので細麺だと具材の味が強すぎる。新玉ねぎは丸ごと1個つかう。
貧乏人の新玉ねぎパスタのレシピ
- 新玉ねぎを全部スライス
- ニンニクみじん切り
- バジルを葉と茎に分ける
- ニンニク、唐辛子、バジルの茎を炒める
- 新玉ねぎを入れて塩2つまみ
- アンチョビを入れて混ぜる
- 蓋をして5分煮詰める
- 新玉ねぎを混ぜて蓋をして5分
- バジルの茎を取り出して茹で汁と水
- 茹でたパスタを混ぜる
- バジルの葉をちぎって混ぜる
- 皿に盛ってバジルの葉を飾る
新玉ねぎは全部スライス。繊維に沿って切り刻む。
みじん切りしたニンニク、カラブリア唐辛子、バジルの茎をオリーブオイルで炒める。最初は強火で沸騰したら弱火。
ニンニクが色づく前に新玉ねぎを全部入れて塩を2つまみ。火力は弱火のまま。
新玉ねぎがしんなりしたらアンチョビを入れて潰す。
蓋をして5分ほど弱火で煮る。蓋を開けて一度かき混ぜる。再び蓋をして5分間煮る。もっと玉ねぎを飴色にしたい人はプラス10分ほど煮る。
茹で汁と水を合わせて50cc入れて底に焦げがついていたら、こそぎだす。旨味なので逃さないこと。
茹でたパスタを混ぜる。
バジルの葉をちぎって混ぜる。
お皿に盛ってバジルの葉を飾る。
↓貧乏人の新玉ねぎパスタの食材↓
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最後までご覧いただき、あリガトーニ。