日本が世界に発信する「〇〇風」といえば、ミラノ風ドリア。全然ミラノと関係ないが、愛嬌があってユニーク。けどパスタにおいては見過ごせないものがある。名前もレシピも文化も間違って伝えられている。それが天高くキノコ肥ゆる秋にピッタリな「ボスカイオーラ」
- ボスカイオーラとは「森のパスタ」
- ボスカイオーラ(王道)
- ボスカイオーラ(タイム)
- ボスカイオーラ(北イタリア)
- ボスカイオーラ(南イタリア)
- 和風ボスカイオーラ
- 挽き肉のボスカイオーラ
- 麺つゆボスカイオーラ
ボスカイオーラとは「森のパスタ」
ボスカイオーラはイタリア語で「Pasta alla Boscaiola」。 allaは「〜風」。直訳すると「森風のパスタ」。これでは意味不明だから意訳すると「森の材料を使ったパスタ」。イタリア語で「bosco」は「森」。boscaiolaは「森の」。日本で「木こり風のパスタ」と訳されるが、明らかな間違い。木こりは「boscaiolo」
ツナは入れない
キノコとツナとトマトのパスタをボスカイオーラとして紹介する料理人がいるが、これはローマの「カレッティエラ」。これからは「カレッティエラ」として作って欲しい。ボスカイオーラは「森の食材を使ったパスタ」なのでツナ(海の食材)は使わない。どこで間違ったのか定かではないが、昭和の料理雑誌がカレッティエラを間違ってボスカイオーラとして紹介し、「ツナ」が木の株に見えるので「木こり風のパスタ」と上塗りで間違って伝染してしまった。パスタ文化に失礼なので正しく伝えて欲しい。
北イタリアと南イタリアの違い
ボスカイオーラは北イタリアではクリームソースで作られ、南イタリアではトマトソースで作られることが多い。新宿の『あるでん亭』では、南イタリアのトマトソースを「ファンタジア」の名前で出している。北斗神拳(北イタリア)と南斗聖拳(南イタリア)のふたつも食べ比べてほしい。
ボスカイオーラ(王道)
まずは、クリームもトマトも使わない王道のボスカイオーラから紹介。シンプルだがキノコの旨味が楽しめるので、まずは王道のボスカイオーラから作って欲しい。
ボスカイオーラ(王道)の材料
- フェットチーネ:100g
- ドライポルチーニ茸:10g
- パンチェッタ:40g
- カルピス社のバター:15g
- ペコリーノ・ロマーノ: 適量
- 白ワイン(料理酒でもOK):30cc
- 黒胡椒:たっぷり(無くてもOK)
パスタはなんでもOK。ショートパスタでもいい。ドライポルチーニは舞茸やマッシュルームなどキノコの香りが強いもので代用してもOK。ボスカイオーラは「森の食材を使ったパスタ」なので、特に種類は限定されない。白ワインは料理酒でもいいし、それも無しでOK。ここに玉ねぎ、イタリアンパセリなどの旨味を足すと、もっと美味しくなる。
ボスカイオーラ(王道)のレシピ
- ポルチーニ茸を水につける
- パンチェッタをバターで炒める
- 白ワインを入れてアルコール飛ばす
- ポルチーニ茸を入れる(戻し汁も)
- 火を止めてチーズを削る
- 茹でたパスタを混ぜる
- 皿に盛って胡椒をヌートバー
白ワインが無ければ飛ばしてOK。パスタは茹で時間次第で開始のタイミングが変わるが、今回はパンチェッタを炒めている間に茹で始めた。
ポルチーニ茸が浸かるくらい水を入れる。5分くらいでフニャフニャになる。
フライパンにバターを入れてパンチェッタを炒める。火力は弱火から中火でOK。バターがなければオリーブオイルでもOK。
パンチェッタがこんがりしてきたら白ワインを入れてアルコールを飛ぶまで煮る。
ノンアルになったらポルチーニ茸を入れて炒める。
徐々にポルチーニ茸の戻し汁を加える。汁にキノコの旨味が全部つまっているので絶対に捨てない。
パスタが茹で上がる1分前に火を止め、チーズを削る。着火したままだとチーズが固まるので注意。削ったらよく混ぜる。
茹でたパスタをスカイダイビングさせて、よく混ぜる。
お皿に盛ったら、たっぷりと胡椒をヌートバー。見た目もオシャレになる。
ボスカイオーラ(王道)の食材
ボスカイオーラ(タイム)
ボスカイオーラはポルチーニ茸を使いたいが他のキノコ類でもできる。シンプルなのに何も足さなくていい。何も引かなくていい。ボスカイオーラの力を信じる。
ボスカイオーラ(タイム)の材料
- タリアテッレ:100g
- キノコ(なんでもOK):お好きな分量
- 有塩バター:30g
- タイム:お気に召すまま
- パルミジャーノ・レッジャーノ:20g
パスタはタリアテッレじゃなくてもなんでもOK。キノコはお好きなもので。今回は、まいばすけっとで買った、しめじ&舞茸1パックずつ。ポルチーニがない代わりにタイムを使おう。グッとイタリアンっぽくなる。
ボスカイオーラ(タイム)のレシピ
- タリアテッレを茹で始める
- フライパンにバターを入れる
- キノコ類を全部ぶち込む
- 茹でたタリアテッレを混ぜる
- 削ったチーズとタイムを混ぜる
- 皿に盛って完成
レシピの参考はマルコさん。マルコさんは自分でタリアテッレを打った。そんなん面倒くさいので乾麺を買ったが真似したい方は動画を参考に。
バター30gをフライパンで溶かす。
キノコを全部ぶち込む。キノコにも軽く塩を振る。美味しくな〜れと願いながら。
バターが焦げないように弱火でじっくり炒める。焦がれるのは恋と醤油だけ。
茹でたタリアテッレを混ぜる。
チーズを削ってタイムを高田純次くらいテキトーにパッパと振りかける。
お皿に盛って完成。追いチーズとかオリーブオイルを使いたくなるが、こんなにやさしい味に足すのはもったいない。ぜひ素朴なボスカイオーラを味わってほしい。
ボスカイオーラ(タイム)の食材
ボスカイオーラ(北イタリア)
生クリームを使う北イタリアのボスカイオーラ。北斗神拳。北国の帝王。キノコをソテーするフランス料理の「デュクセル」というやり方。知っておくと「フレンチのデュクセルって美味しいよね」なんて超オシャレ人間になれる。
ボスカイオーラ(北イタリア)の材料
- タリアテッレ:100g
- マシュルーム:1パック
- 玉ねぎ:1/4個
- バター:10g
- 黒胡椒:たっぷり
- 生クリーム
- タイム:小さじ1(イタパセでOK)
- イタリアンパセリ:仕上げ
- グラナ・パダーノ:仕上げ
麺は北イタリアに多いタリアテッレを使うが、普通のスパゲティでいい。玉ねぎはエシャロットでもOK。今回、キノコ、玉ねぎ、ハーブ(タイム)、黒胡椒をバターでソテーするデュクセルを試してほしい。タイムがなければ刻んだイタパセでもいい。
ボスカイオーラ(北イタリア)のレシピ
参考にさせていただいたのはAOSの青池さん。ボスカイオーラでもなく、デュクセルもしない超簡易版なので全然違うが、動画もご覧ください。
- マッシュルーム、玉ねぎをみじん切り
- タイム、黒胡椒と一緒にバターで炒める
- 黒くペースト状になったら生クリーム
- 茹でたパスタを混ぜて胡椒をヌートバー
- お皿に盛ってチーズ、イタパセを散らす
マッシュルームと玉ねぎを粗めにみじん切り。ブンブンチョッパーを使わない人は包丁でもっと細かく刻む。しんどいけど。
ブンブンチョッパーで玉ねぎ、マッシュルームをここまで細かくペーストにする。これ包丁でやるの大変やで。
ペーストにしたマッシュルーム、玉ねぎをバター、タイム、黒胡椒で炒める。火力は中火。これがデュクセルでっせ。覚えておくと超オシャレ。ここからパスタを茹ではじめる。
ペーストの水分を飛ばし切って、こんがり焦げがつくまでじっくり炒める。デュクセルは時間がかかるけどじっくり。
生クリームを入れて、コトコト煮込む。
こんな感じによく混ぜる。
茹でたタリアテッレを入れて胡椒を振る。
お皿に盛ってチーズを削り、イタリアンパセリ、オリーブオイルを回しかけて完成。
ボスカイオーラ(北イタリア)の食材・道具
ボスカイオーラ(南イタリア)
トマトソースを絡めた南イタリア(南斗聖拳)のボスカイオーラ。ショートパスタのリガトーニを使う。シンやユダやサウザーではなく、水鳥拳のレイや白鷺拳のシュウのやさしさ。パスタは雲のジュウザの如く自由気ままに。
ボスカイオーラ(南イタリア)の材料
- リガトーニ:100g
- マッシュルーム:1パック
- ベーコン:40g
- トマトソース:大さじ2
- 玉ねぎ:1/4個(なくてもOK)
- イタリアンパセリ:適量
- 黒胡椒:仕上げ
パスタはショートパスタじゃなくロングパスタでもなんでもOK。そこは重要じゃない。トマトソースはコッポラ社のモンタナーラがおすすめ。キノコの旨味をワンフロムザハートに閉じ込めたトマトソース。まさにボスカイオーラのためにある。無ければトマト缶やトマトピューレをよく煮詰めて作ろう。玉ねぎは旨味の援軍なので無くてもOK。イタリアンパセリも彩りのため。イタリア本国のボスカイオーラに近づけたければベーコンじゃなくパンチェッタがおすすめ。イタリアではベーコンはほとんど食べず、生涯でベーコンを食べたことがない人も少なくない。
ボスカイオーラ(南イタリア)のレシピ
- 材料を食べやすい大きさにカット
- みじん切りにした玉ねぎを炒める
- しんなりしたらベーコンを炒める
- マッシュルームを混ぜる
- トマトソースを入れる
- 茹でたリガトーニを混ぜる
- オリーブオイルを回しかける
- お皿に盛って胡椒をヌートバー
材料を食べやすくカットする。玉ねぎのみじん切りが面倒くさかったらスライでもOK。
マッシュルームも食べやすい感じに切る。
玉ねぎをオリーブオイルで中火で炒める。火が通りにくいものからいく。
玉ねぎがしんなりしたらベーコンを投入。ベーコンは火が強いとパチパチパンチに跳ねてしまうので弱火におとす。跳ねるのを覚悟なら中火でもOK。
ベーコンがいい感じに焦げたら火が通りやすいマッシュルームを投入。塩も軽く振る。
ベーコンに火が入ったらトマトソースを大さじ2入れる。あくまで主役はマッシュルームなのでトマトソースは少なめがおすすめ。
茹でたリガトーニを混ぜる。鍋を振ってよく混ぜる。
火を止めてオリーブオイルを回しかける。味見をして薄ければ塩を足してもOK。
お皿に盛ったらチーズを削りイタリアンパセリを降らせ、胡椒をヌートバーして完成。
ボスカイオーラ(南イタリア)の食材・道具
和風ボスカイオーラ
北イタリアと南イタリアに割り入って和風のボスカイオーラがあってもいい。北斗神拳でも南斗聖拳でもなく、皇室のニッポンならでは、天帝を守護するファルコが操る拳法・元斗皇拳のボスカイオーラ。
和風ボスカイオーラの材料
- バリラ1.6mm:100g
- しめじ:1パック
- 舞茸:1パック
- ニンニク:1片
- 魚醤:15cc(大さじ1)
- バター:15〜20g
- イタリアンパセリ:適量
麺はなんでもいい。魚醤はなければ普通の醤油でもOK。バターは有塩、無塩お好きに。塩魔大王は黙って有塩。キノコはエリンギや椎茸などなんでもいい。松茸でもいい。
和風ボスカイオーラのレシピ
- イタリアンパセリを茎と葉に分けて刻む
- 潰したニンニクを炒める
- しめじ、舞茸を加えて塩を振る
- イタパセの茎、魚醤を入れる
- 茹でたパスタ、バターを和える
- 皿に盛ってイタパセの葉を散らす
イタリアンパセリを茎と葉に分けて刻む。茎は捨てない。日本のイタリアンパセリは柔らかいので旨味になる。本家イタリアを超えたメイド・イン・ジャパン。ニンニクは刻んでもOK。今回はバター醤油の風味を優先したいので潰すだけ。スラムダンクの左手は添えるだけ理論。
まずは潰したニンニクをオリーブオイルで炒める。最初は強火。シュワシュワ沸騰したら弱火にして香りを引き出す。
ニンニクのアロマが薫ってきたらシメジ、舞茸を入れて塩を一振り。キノコから水分を追い出すため。
キノコが香ばしく焼けてきたら魚醤を大さじ1、イタリアンパセリの茎を入れる。
茹でたパスタとバターを入れて和える。
お皿に盛ってイタリアンパセリの葉を飾って完成。スパークリングや白ワインと合う。
和風ボスカイオーラの食材&道具
挽き肉のボスカイオーラ
挽き肉とキノコの旨みを合わせたボスカイオーラ。調味料は最小限で最高の味を引き出す。パスタの真髄。
挽き肉のボスカイオーラの材料
- バリラ1.6mm:100g
- 舞茸:1パック
- しめじ:1パック
- 豚ひき肉:100g
- ローズマリー:少々(なくてもOK)
キノコは椎茸かマッシュルームを追加したいところ。まいばすけっとで売り切れてたので2種類だけにした。挽き肉は牛、鶏なんでもOK。今回はイタリア感を出すためにローズマリーを使ったが無くてもOK。
挽き肉のボスカイオーラのレシピ
- 挽き肉に塩胡椒、ローズマリーを振る
- キノコを素焼き、水分が出たら塩を振る
- キノコを避けて挽き肉をオイルで炒める
- 茹で汁を一杯いれて鍋の底の旨みをとる
- 茹でたパスタを和え、素焼きのキノコを戻す
- 皿に盛って完成
ポイントはキノコを素焼きにして香ばしい匂いを引き出すこと。これで十分おいしく、秋を感じられる。
挽き肉に塩胡椒をひとつまみ、ローズマリーを少々かける。写真はローズマリーが多すぎた。もっと少なくていい。
油やバターを何もひかず、中火でキノコを素焼きする。焼き色がついて香ばしくなる。あれば鉄のフライパンがおすすめ。なければテフロンでOK。
キノコから水分が出てきたら塩をひとつまみ。スエ(汗をかかせる)というフランス料理の技法。
キノコから水分が完全に抜けて焼き色がつくと、これだけで美味しい。鍋の底についた焦げは旨みなのでご安心。
素焼きしたキノコを避けて、少しオリーブオイルを引いて挽き肉を炒める。
挽き肉に火が通ってボディビルダー色になったら茹で汁を一杯いれる。フライパンの底についたキノコや挽き肉の旨みをこそぎ出す。絶対に逃さないこと。
茹でたパスタ、素焼きしたキノコを戻して和える。
皿に盛って完成。オリーブオイルも胡椒もかけなくても十分にキノコの香りだけで愉しめる。
挽き肉のボスカイオーラの道具
麺つゆボスカイオーラ
麺つゆ&ペペロンチーノのボスカイオーラ。キノコと麺つゆの和風の旨味にペペロンチーノのキレが加わった複雑で豊潤な美味しさ。
麺つゆボスカイオーラの材料
- バリラ1.6mm:100g
- 麺つゆ(3倍濃縮):小さじ2
- ニンニク:1片
- カラブリア唐辛子:1本
- 舞茸:1パック
- しめじ:1パック
- エリンギ:1パック
キノコ類は椎茸やマッシュルームなど何でもOK。麺つゆは2倍濃縮でもOK。イタリアンパセリを加えても美味しい。彩りにもなる。
麺つゆボスカイオーラのレシピ
- ニンニクをスライス
- キノコを素焼きにして塩を振る
- キノコをよけてニンニク、唐辛子を炒める
- キノコと混ぜて麺つゆをかける
- 茹でたパスタを和える
ニンニクはスライス、みじん切り、すりおろし何でもOK。
油もバターも無しでキノコを中火から強火で素焼きにする。パチパチと音がなったら水分が出てキノコの香りが出始める合図。
キノコの水分が抜けるまで炒める。このくらい炒めてからパスタを茹ではじめる。
キノコを避けてニンニク、カラブリア唐辛子を炒める。最初は強火で、沸騰したら弱火で。
ニンニクがボディビルダー色になり始めたらキノコを戻し、麺つゆ小さじ2を加える。麺つゆの水分でフライパンの底についたキノコの焦げ(旨味)をこそぎだす。
茹でたパスタをよく絡める。味を見て塩が足りなければ足す。
お皿に盛って完成。彩りにパセリや大葉など緑系のハーブを添えても美味しい。
麺つゆボスカイオーラの食材・道具
ボスカイオーラに近いキノコパスタ
最後までご覧いただき、あリガトーニ。