パスタの調味料は魔法のふりかけ。こだわるほどパスタは美味しくなる。パスタの調味料はプロと遜色ないものが手に入る。スーパーに売っているものより値段はするが、プロと変わらない、むしろ飲食店より美味しい味が手に入るなら喜んで手を出したい。3,000円のオリーブオイルを買っても家庭なら3ヶ月以上は持つ。1日1食作っても1回33円。数百円のオリーブオイルであまり美味しくないパスタを使うなら33円くらい安いもの。パスタは調味料によってプロを超えられる数少ない家庭料理。旨味の界王拳で変身しよう。
オリーブオイル(生命の泉)
イタリア料理はムラムラの美学。見た目もオシャレでエロくないといけない。パスタに艶とフェロモンの化粧をするのがオリーブオイル。パスタを口に入れて最初に感じる味はパスタではなく、コーティングしたオリーブオイルである。料理は錯覚のアート。オリーブオイルはパスタの生命の泉。古代ローマ帝国の時代からパスタと歴史を並走してきた。はじめ香油として使われていたが、古代ローマ人が料理に使った。オシャレなオリーブオイルを使えば味が10倍増し。オリーブオイルにこだわらない訳にはいかない。理由なき反抗。良いオリーブオイルを毎日使っても家庭なら3ヶ月〜半年。1本3,000円でも月500円。それで楽しい料理の時間と美味しいパスタが食べられるなら使わない手はない。
ロレンツォ(イタリア)
パスタ作りに目覚める前は味の素のオリーブオイルを使っていた。そのあとシチリア州・ロレンツォのEVを使い始めた。そこにカッコよさがあるから。オリーブオイルは最後の仕上げにパスタに降り注ぐ恵の雨。口に入れる前の最後の調理工程。フィニッシュホールドはカッコよくキメたい。武藤敬司のムーンサルトプレス。黒がスパイシー、金がマイルド、白がクリーミーと違うが、そこまで違いはわからない。どれを買ってもOK。好みでいい。
小豆島オリーブ園のピュアオリーブオイル(日本)
ロレンツォのあとにインターセプトしてきたのが、上の2つ。左が小豆島オリーブ園のピュアオリーブオイル。右がスペインのアンダルシア地方のカネナ。ともに500mlで見た目の良さではトップ・オブ・トップ。大日本人のひとりとして、ピュアオリーブオイルくらいは国産のオリーブオイルを使いたい。
ピュアオリーブオイルとエクストラバージンの違い
面白いのがピュアオリーブオイルとエクストラバージンの違い。ピュアと言っているのに搾ったオリーブオイルを精製して香りや味のない「油」にしたもの。余計な香りや癖が付かないのでペペロンチーノでニンニクを炒めるときなどに向いている。一方のエクストラバージンオリーブオイル。イタリア語でカッコよく言うと「Olio Extra Vergine di Oliva(オーリオ・エクストラ・ヴァージン・ディ・オリーバ)」。YouTubeでマルコさんがいつも言っている。「エクストラバージン」とはイタリア語で「最高に純粋」。つまりオリーブの実を搾っただけのオイル。ピュアオリーブオイルよりピュア。この捻転が面白い。エクストラバージンオリーブオイルは香りやスパイシーさが種類によって全然違うので仕上げのコーティングに向いている。熱を加えると風味が飛ぶので、最初にフライパンで熱するときはピュアオリーブオイルでいい。
カネナのロイヤル種(スペイン)
カネナの正式名称は「カスティージョ・デ・カネナ(カネナ城)」。スペイン南部アンダルシア地方はオリーブ栽培において数千年を超える歴史があり、アンダルシア地方はスペインの80%の生産量を占める。北部のカタルーニャ地方とは比較にならない。カネナは1780年からオリーブオイルを生産。小倉知巳シェフが愛用して勧めていたので使い始めた。カネナのロイヤル種は掴みがいのある骨太なぶっといボトル。七人の侍の総大将、島田勘兵衛(志村喬)。スペインの絵画でいえばフランシスコ・ゴヤが描く漆黒の世界と優雅さ。塩で茹でただけではパスタのお肌が乾燥する。オリーブオイルは潤いを与える化粧水。化粧品のパッケージはカッコよくいきたい。カネナを使おう。
カネナの三銃士
そこからカネナのオリーブオイルを試す。種が異なり、右からアルべキーナ種、ピクアル種、またアルベキーナ種。好みによるが、おすすめは右端の「早摘み冷燻オリーブオイル アルベキーナ種」。スペインの絵画では、ピカソが青の時代を描く前のデッサンといったところ。パンチがある。オリーブオイラー万歳。
ICONO(アイコノ)
ICONO(アイコノ) のオリーブオイル。ICONOは高級オリーブオイルの半額ほど。それでいて芸能人格付けチェックをやれば絶対にわからないレベルの味わい。市販のオリーブオイルより良いのを使いたいけど、値段が高くて困る方は、ぜひICONOを。
ワンプラスワン
懲りずにまたカネナのオリーブオイルを買った。しかも2つ。ビオディナミ農法で作られたピクアルとアルベキーナの2種類。農薬を使わずに栽培する有機栽培に加え、自然素材の肥料で土壌の活性化を図ることなど手間ひまをかけた栽培方法。土壌生物が豊富な「生きた土」で育ったオリーブは、色・艶・味・香りが強い。
トマトソース
コッポラの3種の神器
パスタに欠かせないのがコッポラ社のトマトソース。『ゴッドファーザー』『アウトサイダー』『地獄の黙示録』のフランシス・フォード・コッポラ監督がプロデュースするソース。重宝するのは上の3種類。
先発のエースが左端のバジリコ。主にアラビアータやマリナーラ系で使うが何にでも合う。直球よし、変化球よしの上原浩治のような存在。もはやトマトソース=バジリコ。
ボスカイオーラや野菜の旨みを使うパスタは真ん中のモンタナーラをリリーフ。セットアッパー藤川球児のように真っ直ぐなストレートの味。
最後のプッタネスカはその名のとおり、プッタネスカを作るときだけ使う。一子相伝のソース。カットボール1球種だけで勝負する史上最高のクローザー、マリアーノ・リベラのような存在。
ピノッキオのトマト缶
基本的にはコッポラのトマソーで事足りるが、アマトリチャーナなど、純なトマトの味を入れたいときはピノッキオのトマト缶を使う。
愛くるしいパッケージ。ホールよし、ダイスよし。シェフROPIAさんも愛用。大阪にあるPONTE VECCHIO(ポンテベッキオ)の山根大助シェフも使っていた。トマトの塊とジュースの味に差がないものは良いトマト缶。悪いものはホールトマトやカットトマトとトマトジュースの味がバラバラ。ピノキオは実を食べてもジュースの部分も同じ味。
生クリーム
トマトパスタ、オイルパスタなどと並んで人気が生クリームを使ったクリームパスタ。生クリームにも濃度の違いがあり、味やコクが変わるので、こだわるほど楽しい。クリームパスタはイタリア語では「アッラ・パンナ(allla panna)」と呼ばれる。冬になるとクリームパスタが一層のファンジアを醸し出す。
ナカザワとタカナシ
スーパーで見かけることが多いのは中沢乳業と高梨乳業。ともに北海道の生クリームを使用。正直、熱を入れると違いは感じないが、タカナシのほうが色が黄色で甘味が強く、ナカザワのほうが純白でクリーム感が強いと言われるが、真相は藪の中。小倉知巳シェフはタカナシ派。
塩、コショウ、ニンニク
塩、コショウ、ニンニクの御三家。
モティアの海塩(粗塩)
パスタの茹で汁に使うのは、シチリアの天然海塩"モティア"。シチリア島西部のトラパニで作られている。粗塩で粒が大きい。地中海の海水を塩田に引き込み、太陽と風だけでゆっくりと蒸発させ結晶にした塩。ぶっちゃけ「火を通すと塩の味など変わらなくなる」と言う小倉シェフの意見もある。熱いと塩味は感じにくく、ぬるいと塩のエグ味が浮き立つ。
「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフによると、岩塩はカルシウムが豊富で沸騰するとパスタの表面にくっつき壁になってしまうらしい。フィレンツェにある日本人のトラットリアのシェフは岩塩にこだわると言うから、誰が正しいのか迷宮入り。結局なんでもええねん。あえて塩にこだわるのは、パスタへのリスペクト。熱湯にぶち込ませてもらうのだから、せめて泉質の良い温泉につかってほしい。Let's 塩魔大王。
マリチャの胡椒、生コショウ
胡椒はパスタに"キレ"を生む。コショウを制する者はパスタを制する。おすすめはマレーシア産の「マリチャ」。インドのサンスクリット語で「胡椒」の意味。そのまんま東。モティアの塩もマリチャの胡椒もファビオさんのおすすめ。市販の胡椒に比べてキレがある。目立たないが、胡椒の量が多いパスタなら味の違いが明確。影の必殺仕事人。ダークナイトのような存在。
生コショウ
カチョエペペやカルボナーラには、カンボジア産の生コショウの塩漬けを振りかける。見た目が具志堅用高みたいで究極にダサいが、味はバツグン。おつまみとしてそのまま食べても美味しい。他にも生コショウはあるが、ファビオさんが紹介していたからコレにした。
青森県産のニンニク
ニンニク・マッドネスの自分は、いつも青森県産。中国産、スペイン産のほうが香りが強いとリュウジさんは言うが、違いは感じない。ただ、包丁を入れたときの柔らかさが青森は秀逸で、舶来ものは少し硬い気がする。ニンニクはいつも小型のカートに入れる。こんなんナンボあってもいいですからね。
禁断のスパイス『ほりにし』
2、3年前に悪魔の如く世に降臨したのが禁断のスパイス『ほりにし』。和歌山県のアウトドアショップ『Orange』が開発したアウトドアスパイス。名前は開発者の堀西さんの苗字から。内容は20種類以上のスパイスを調合したもので、肉や魚、野菜やご飯など何でもかけて良い。キャンパーやクライマーの間では「その辺の落ち葉にかけても美味い」とすら言われている。いろんな複雑な旨みがあるが、要はガーリックチップス。ニンニク味が最も強い。お酒が好きな人は、ほりにしをツマミにすると美味しい。ニンニク・マッドネス御用達。スパイスガールズに食べて欲しい。
カラブリア産の唐辛子
家庭のパスタがプロを超えるのに必須アイテムがカラブリア産のペペロンチーノ・ピッコロ(小さい唐辛子)。日本の唐辛子は辛味のキレが強すぎて旨味を感じにくい。一方のカラブリア産はどんなに辛さがあっても旨味がしっかり伝わる。1,000円くらいで1年以上持つ。人生観が変わるのでぜひ使って欲しい。
カルピス社のバター
東銀座にあるイタリア料理「ラ・ボッテガイア」のYouTubeでパッケージに一目惚れしたのがカルピスの特撰バター。すごいのがボディが雪野ような純真なホワイト。その美しさ、まさに長澤まさみ。バターのエグ味がなく、まろやか。もはやバターにあらず。白い恋人。もう戻れない依存バター。塩魔大王なので有塩しか使わない。有塩は遊園であり優艶。塩があるバターを使いたい。バターの使用量が多いときは、後追いの塩やパスタを茹でる塩を減らして調整する。もちろん無塩バター教の信者さんは無塩バターをお使いください。実家の母親は無塩バターです。
醤油
ふつうの醤油
「ふつうの醤油」は、醤油に出汁の旨味を加えた「出汁醤油」。醤油に砂糖、みりん、食塩、かつお節、昆布の旨味爆弾を投下。キャップを開けて匂いを嗅ぐと、香りが楊貴妃。醤油とは思えない色気。これから作る「ほうれん草とベーコンの和風パスタ」もクレオパトラ感が凄い。ぜひ一家に一本。
魚醤
醤油が味の決め手となるパスタは多い。パスタの運命を左右させてしまうなら、普通の醤油ではなく、鮎の魚醤やコラトゥーラ、ナンプラーがおすすめ。
鮎の魚醤
鮎の魚醤は魚臭さがなく、どんな食材にも合う。原材料は鮎と塩のみ。ジャンルや料理を選ばず、味に"深み"だけを与える。琥珀色の魔法の雫。醤油の代わりになり、目玉焼きに1滴たらすだけで高級な味になるのでおすすめ。ちなみに日本三大魚醤は秋田の「しょっつる(ハタハタやイワシ)」、能登の「いしる(イワシやイカの内臓)」、香川の「いかなご(イカナゴ)」
コラトゥーラ
コラトゥーラとはカタクチイワシを塩に漬け発酵させた調味料。世界一美しい海岸と呼ばれるアマルフィ海岸にある漁師町「チェターラ」で作られる。カタクチイワシは毎年3月から7月に水揚げされたものに限定。ひとつの樽から200本しか 抽出できない。イワシの旨味や匂いが強く、魚醤の中の魚醤。パスタはもちろん、目玉焼きにかけると最高。見た目がオシャレなのでそれだけでテンション爆上がり。
ナンプラー
ナンプラー( nam pla)はタイの魚醤。エスニック料理の代名詞的な調味料。正式な発音は「ン」ではなく「ナムプラー」。namはタイ語の液体、plaは魚の意味。伝統調味料と思いきや歴史は浅く、家庭に普及するのは20世紀少年から。小魚を塩漬けにして発酵させて作る。魚はイタリアのコラトゥーラと同じくカタクチイワシが主流。醤油より色が薄く、塩分濃度は醤油が14.5%、ナンプラーが22.9%と圧倒的に高い。
パスタの調味料エトセトラ
ンドゥイヤ
最強のアラビアータを作るなら「ンドゥイヤ」をトマトソースと一緒に入れる。いかつい名前の食材だが、カラブリアの特産品で、唐辛子の入ったペースト状のサラミ(豚肉)のこと。ンドゥイヤのペーストを20g加えるだけで、アラビアータのキレがマシマシ。コクがマシマシ。旨味がマシマシとワンランクもツーランクも上の味になり、プロのお店に勝ち確。悪魔の調味料。通販では売っていないことが多いのが玉に瑕だが、アラビアータ好きを名乗る方はぜひ一度試してみて欲しい。
ごま油
ペペロンチーノや和風パスタに欠かせないごま油とは、ゴマ(胡麻)の種子に圧搾等の加工をして作られる食用油。ナッツのような芳香がパスタに合い、耐熱性がいいので酸化しにくい。ビタミンEや不飽和脂肪酸など栄養面でもバツグン。愛用は九鬼の太白純正胡麻油。三重県四日市市のメーカーで、ごまを煎らずに、低温圧搾法で搾る。色や香りがなく、胡麻の旨味だけを引き出す。速水もこみち師匠が愛用していたので真似した。
ニガリ
10分以上のパスタを茹でるときは「本にがり」をぶち込み、軟水を硬水に整形手術。硬水はマグネシウムが多く、アルデンテに仕上がりやすいそうだ。
タバスコ
coming soon
最後までご覧いただき、あリガトーニ。