パスタの楽しさのひとつが「〇〇風」という名前。カルボナーラは「炭焼き職人風」。プッタネスカは「娼婦風」。「〇〇風」の数は藤井風も真っ青なくらい多い。その中でもユニークな名前が「靴職人のパスタ」。現地では「スカルパリエッロ」という。作ってみると、まあ美味しい。得意料理を聞かれたら「スカルパリエッロ」と答えよう。ヤバイ奴と思われるか尊敬されるかの二択。そんなナイキの創業者フィル・ナイトにも食べてもらいたいシュードッグ(靴にすべてを捧げる人間)なパスタを紹介。
靴職人風のパスタ(スカルパリエッロ)とは
靴職人風のパスタ(スカルパリエッロ)とはローマ、ミラノに次ぐイタリア第三の都市ナポリの名物パスタ。ニンニクベースのトマトソースにチーズを和えたもの。スカルパリエッロ(Scarpariello)は料理名で、日本語に訳すと「靴職人風」。ブーツの形をした国土のイタリアにピッタリ。
「靴作り職人」と「靴磨き職人」
スカルパリエッロは靴職人といっても2通りあり「靴を作る職人」と「靴磨き職人」に分かれる。「靴を作る職人」と言われるのは、靴代を払えないナポリのお客さんが、代金のかわりにチーズを置いていき、職人がトマトソースのパスタにかけて食べたことから。だから、チーズたっぷりのパスタ。
「靴磨き職人」はナポリの人たちがスカルパリエッロを作ると、ソースが美味しすぎて残ったソースにパンにつけて食べた。皿がピカピカになるので、靴磨き職人みたいだから「靴磨き職人風のパスタ」と呼ばれる。こちらはチーズ控えめ、トマトたっぷり。
どちらも本家は楕円形のトマトを使う。イタリア人シェフのマルコさんによると、楕円形のトマトは酸味と甘味のバランスがいい。全然わからんけど。ただし、トマト缶やトマトソースで作ってもモーマンタイ(無問題)。お好みで大丈夫。
ショートパスタ「パッケリ」が伝統
パッケリ(paccheri)はナポリがあるカンパニア州のショートパスタ。筒状になっており、茹でるとぷっくら膨らむ。名前はナポリ語で「平手打ち」を意味する「パッカリア」から。パスタを食べたときに平手打ちの音がすることが由来らしいが、そんな音しないので意味不明。伝統的な靴職人のパスタ(スカルパリエッロ)はパッケリで作られる。しかも超美味しい。ちなみにメーカーはヴォイエロがおすすめ。ナポリのパスタメーカーなので。
伝統の靴職人風のパスタ(ショートパスタ)
まずはパッケリで作る靴職人風のパスタ(スカルパリエッロ)。日本は麺大国なのでショートパスタを使わないが、靴職人風のパスタのパスタは是非パッケリか他のショートパスタで食べてほしい。
靴職人風のパスタ(ショートパスタ)の材料
- パッケリ:100g
- ミニトマト:1パック
- ニンニク:1片
- バジル:数枚
- パルミジャーノ・レッジャーノ:20g
- ペコリーノ・ロマーノ:20g
ミニトマトは楕円形で。ポイントはチーズたっぷり。遠慮しないでジャンジャン削って混ぜる。トマトソースが主役なのに、散歩する侵略者くらい旨味を乗っ取ろう。
靴職人風のパスタ(ショートパスタ)のレシピ
- パッケリを茹でる
- トマトを半分に切り、ニンニクを潰す
- ニンニクをオリーブオイルで炒める
- 色がボディビルダーになれば退場してもらう
- ミニトマトを全部ぶち込み塩を振る
- ミニトマトを潰して火を止める
- チーズを削ってスタンバイOK
- 茹でたパッケりを投入
- チーズの大雪を降らせて混ぜる
- ちぎったバジルを入れて混ぜる
- 皿に盛って残りのバジルを飾る
ダルビッシュの背番号と同じ11ステップになったが、やることはシンプルで超簡単。パッケリは10分以上茹でるので先に茹でておく。
トマトを真っ二つに斬る。ニンニクは潰すだけ。スラムダンクの左手は添えるだけみたいな感じ。あとで取り出すので、なんなら皮のまま放り込んでもOKなくらい。
フライパンにオリーブオイルを引いてニンニクを炒める。最初は強火で。沸騰してきたら弱火にして、じっくり香りをオイルにM&A。
ニンニクがボディビルダー色になってきたら取り出す。ニンニク・マッドネスとしては断腸の思いだが、マルコさんのレシピ通りに。
ガーリック風味のオリーブオイルにトマトを全部ぶちこむ。トマトソースを作るときは湯むきしない。皮にトマトの旨みがあるから。そこに山があるから、みたいな感じ。トマトの旨みを引き出すために、強火で一気に炒める。火を恐れちゃ旨いパスタは作れない。
トマトにソルツ(salt)!たっぷり塩対応して潰したら焦げないように火を止める。
パッケリが茹で上がるまでにチーズを削っておく。量が多いので事前準備、段取り命。
パッケリが茹で上がったらよ〜く混ぜる。パッケリはデリケートで崩れやすいので、やさしく。手がかかる乳幼児のようなパスタ。
トマトと絡めたらチーズを降臨。どんどん固まってしまうので、スピード重視で魔法陣グルグルする。必ず火を止めてから入れること。
チーズがいい感じに消えたらバジルをちぎってヒラリ。そしてキラリと混ぜる。
お皿に盛ったら飾りのバジルを添える。トマトの酸味をチーズの旨味が下剋上するバトルを噛み締めながら味わう。信じられないくらい美味しい。
靴職人風のパスタ(ショートパスタ)の食材
靴磨き職人のパスタ(ロングパスタ)
2つ目はロングパスタを使った靴職人風のパスタ(スカルパリエッロ)。靴職人でも「靴磨き職人」のほう。ナポリの人たちがこのパスタを作り、ソースが美味しすぎて残ったソースにパンにつけて食べた。皿がピカピカになるので、その様が靴磨き職人みたいなので「靴磨き職人のパスタ」と呼ばれるようになった。
靴磨き職人のパスタ(ロングパスタ)の材料
- リングイネ:100g
- ミニトマト:1パック
- ニンニク:1片
- バジル:数枚
- パルミジャーノ・レッジャーノ:15g
パスタはなんでもOK。細麺でも太麺でもイケ麺さえ使えば大丈夫。ポイントはミニトマト多め。バジルもマシマシにしてチーズを控える。もちろん、たっぷりでもOK。
靴磨き職人のパスタ(ロングパスタ)のレシピ
- トマトを半分に切る
- トマトの断面に塩を振る
- バジルをちぎる(茎は残す)
- ニンニクは全体重をかけて潰す
- ニンニク、バジルの茎を炒める
- チーズを削っておく
- バジルの茎を取りだしトマト投入
- 茹で汁をレードル一杯入れる
- トマトをお好みで潰す
- 茹でたパスタを入れる
- 火を止めてチーズを入れる
- バジルを入れてよく混ぜる
- オリーブオイルをひと回し
- お皿に盛ってバジルを飾る
レシピのベースはファビオさん。ちょっとやり方が違う部分もあるので完コピしたい方は動画を参考に。
トマトは半分にカットしたら断面に塩を振る。最初に塩を振る。
バットがあると便利。断面に先に塩することでしっかり浸透する。
バジルを因数分解するとき、茎を捨てない。これが香りになる。
沸騰したら弱火に戻し、じっくりオイルにニンニクとバジルの香りを移す。
その間にチーズを削っておくとグッド。
ニンニクがボディビルダー色になってきたらトマトを入れる。このとき、断面を下に向ける。断面ファーストで焼くのがポイント。
トマトを両面しっかり焼いたら茹で汁を入れる。
お好みでトマトを潰す。潰したほうが出汁が取れて旨味の暴君が誕生する。
茹でたパスタを入れて混ぜる。
火を止めてから削ったチーズを入れる。火をつけたままだとチーズが固まってしまうので必ず消火してから。
バジルを入れてオリーブオイルをひと回ししたら、よ〜く混ぜる。
お皿に盛ってバジルを飾ったら完成。ソースが美味しすぎてピカピカにパンで磨いたことが納得の美味しさ。
↓靴磨き職人のパスタの食材↓
最後までご覧いただき、あリガトーニ。