晩春になり気候が暖かくなると冷製パスタが恋しくなる。冷やしそうめん、冷やし中華と並んでで三大冷麺のひとつである。韓国冷麺を加えれば四天王。冷やしパスタには冷製トマトソース、冷製カルボナーラなどあるが、冷製ジェノベーゼの足元にも及ばない。究極の冷製パスタ・ジェノベーゼを迎えに行こう。
- ジェノベーゼとは?材料や調理法
- 冷製ジェノベーゼパスタ(トマト)
- モッツァレラチーズの冷製ジェノベーゼパスタ
- アボカドと生ハムの冷製ジェノベーゼパスタ
- 伝統のジェノベーゼパスタ
- 【裏技】ジェノベーゼは春菊でも作れる
- 冷凍パスタ、レトルトのジェノベーゼ
ジェノベーゼとは?材料や調理法
ジェノベーゼとは、ジェノヴァ地方発祥のパスタソース。起源は不明だが、1800年代にはジェノバの家庭料理として作られていた記録が残っている。ジェノヴァ地方では「Pesto alla Genovese(ペスト・アッラ・ジェノヴェーゼ)」と呼ばれ、Pestoはイタリア語で「砕いたもの」。ジェノベーゼは、新鮮なバジルの香りと風味が豊かで、チーズと合わせることで濃厚な風味が生まれる。そこに塩気も加わり、濃厚さが増す。小倉知巳シェフによるとジェノヴァに行くと毎日ジェノベーゼばかり食べているとか。
そもそもジェノベーゼの調理法は材料を大理石のすり鉢ですりつぶしてペースト状にして茹でたパスタに和えて食べた。パスタ以外にもピッツァや魚、サラダと和えたり、スープにしたりもする。ジェノベーゼで冷製が多いのは火を入れるとバジルの風味が飛ぶから。冷製パスタと相性がいい。
ジェノベーゼの食材
ジェノベーゼに使われる食材はバジル、松の実、オリーブオイル、にんにく、ペコリーノ・ロマーノ(羊乳のチーズ)。そこに塩気を加える。ジェノヴァ地方は気候が温暖で、バジルが育ちやすい。松の実を使う理由は油分が多く、ジェノベーゼソースにコクが出るから。カシューナッツを使う場合もあるが、油分がないのであっさり味。好みの問題なので、どちらでもOK。ペコリーノ・ロマーノも伝統的な食材で現在はパルミジャーノ・レッジャーノを使う人も多い。
ジャガイモとインゲン豆が伝統
そしてジェノヴァでは必ずジャガイモとインゲンが入る。インゲンはバジルの香りと相性がいいから。ジャガイモは甘味を加えるため。見事なマリアージュ。
ジェノベーゼとバジルソースの違い
「バジルソース」はジェノベーゼの英語バージョンで中身は同じ。だけど、どう考えても「ジェノベーゼ」のほうがカッコいい。ジェノベーゼでいきましょう。
本物のジェノベーゼは日本で希少
ちなみに日本で食べるジェノベーゼは本物が少ない。バジルは原価が高いため、ほうれん草や大葉など緑色の食材をブレンドしている。高田馬場にある「かぁさ」は本物にこだわり混ぜ物をしない。だからバジルの風味が凄く1日中、匂いが残る。
洋麺屋 五右衛門『海老とアボカドとモッツァレラのジェノベーゼ』は、おそらくソースは大葉がメイン(違ったらごめんなさい)。バジルを使っていたら、もっとバジルの風味がする。
冷製ジェノベーゼパスタ(トマト)
まずは簡単にして彩り最強の冷製ジェノベーゼ。トマトを切って乗せるだけ。
冷製ジェノベーゼ(トマト)の材料
- ブルネッラのカペッリーニ:100g
- バジル:20g(1パック)
- 松の実:20g
- ペコリーノ・ロマーノ:20g
- タジャスカ種のオリーブオイル:60ml
- 青森県産のニンニク:1片
- アンチョビ:1フィレ
- ミニトマト:5個(お好みで)
ジェノベーゼは火を通さないので、素材の味が出やすい。ジェノベーゼ(バジルソース)は味が濃いので、正直いい加減に作っても割と美味しいが、食材にこだわるほど美味しくなる。せっかくパスタの聖書なので、食べた人をびっくりさせる味にしたい。こだわりがない人は材料も分量も高田純次やザキヤマのようなテキトーでOK。松の実は高いので、カシューナッツでもいい(ただし、味はあっさりになる)。ぶっちゃけバジルすり潰しときゃ、それだけで美味しいから。パスタってすごいっしょ?
推しはブルネッラのカペッリーニ
ジェノベーゼに詳しい人は「リングイーネ」は使わないの?と思うだろうが、それは温かいパスタ。冷製ジェノベーゼには極細のカペッリーニ(capellini)が合う。太さが素麺とほぼ同じ。冷やしそうめんが美味しいように、冷製ジェノベーゼにはカペッリーニ。いろんなカペッリーニを試したがおすすめは「ブルネッラ」か「バリラ」。カペッリーニには珍しくテフロンダイス加工(表面がツルツルしたパスタ)なので、ツルツルと冷製パスタの食感が良い。
オリーブオイルはタジャスカ種
小林幸司シェフは「ジェノベーゼはタジャスカ種のオリーブオイルを使わなきゃダメ」と断言する。タジャスカ種はジェノヴァがあるリグーリア地方の西部で多く生産されているオリーブオイル。味わいがピュアオリーブオイルのようにクセがなくフルーティー。ジェノベーゼの香りと味わいを邪魔することなく味を引き立てる。エクストラバー人のピクアル種やアルベキーナ種は風味が強い。美味しいが、バジルの風味を邪魔してしまう。全然、味が違うので一度試して欲しい。「ジェノベーゼのために買ってられるか」と言わず、ベートーヴェンの『エリーゼのために』を聴きながら買おう。
ニンニクは青森県産
こだわるならニンニクは青森県産がいい。スペイン産や中国産は辛味が強い。ジェノベーゼは火を通さないのでニンニクの臭みがダイレクトに来るので、最も味がスッキリしている青森県産がいい。
冷製ジェノベーゼ(トマト)のレシピ
- ミニトマトを二等分に切る
- 他の材料をミキサーにかける
- バジルソースを冷蔵庫で冷やしておく
- カペッリーニを1分長めに茹でる
- 茹でたパスタを氷水で締める
- バジルソースと和えて皿に盛る
- ミニトマトを乗せて完成
基本のレシピは速水もこみち師匠(パスタに目覚めるきっかけなので)。ただし、速水もこみち師匠は温かいパスタなので、これを冷製ジェノベーゼにシフトチェンジする。松の実をフライパンで軽くローストすると言われるが、ぶっちゃけ味がわからん。だってバジルとオリーブオイルの風味で消されてしまうから。カペッリーニを表示時間の1分長めに茹でるがポイント。氷水で締めるのでパスタが硬くなるので、1分長めに温泉に浸かってパスタをほぐしておく。そして氷風呂に入るとちょうど良い硬さになる。
ミキサーはT-falがおすすめ。MOCO'Sキッチンで速水もこみち師匠が使っていて、ずっと憧れていた。粗めと細かめが選べるのでグッド。
材料を全部ぶち込んで細かくするだけ。超簡単なのに超美味しい。それがジェノベーゼの魅力であり魔力。
ブンブンチョッパーの冷製ジェノベーゼもあり
バジルの食感を重視したい方はブンブンチョッパーで粗めに削るのもあり。
ミキサーの代わりに材料をぶち込んでブンブンするだけ。
最初から多少は材料を切っておくと良い。
↓冷製ジェノベーゼの食材↓
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モッツァレラチーズの冷製ジェノベーゼパスタ
バジルソースだけの冷製ジェノベーゼじゃ寂しい。ウサギは寂しいと死んじゃう。ひとつ屋根の下の小雪(酒井紀子)のような人に、一品だけ食材を足すならモッツァレラチーズがおすすめ。雪のように白いモッツァレラは見た目も"涼"をくれる。暑い夏にピッタリ。のりぴーもマンモス喜ぶ。
モッツァレラ冷製ジェノベーゼの材料
- カペッリーニ:100g
- バジル:20g(1パック)
- カシューナッツ:20g
- ペコリーノ・ロマーノ:20g
- タジャスカ種のオリーブオイル:60ml
- 青森県産のニンニク:1片
- アンチョビ:1フィレ
- モッツァレラチーズ(ミニタイプ):1袋
材料は基本的に先ほどの完コピ。ウォーリーをさがせ的に違うのは、松の実をカシューナッツで代用している。松の実は高いんで、まいばすけっとに売ってる98円のカシューナッツを買ってきた。モッツァレラチーズはミニタイプがおすすめ。チーズはパルミジャーノでもOK。
モッツァレラ冷製ジェノベーゼのレシピ
- 材料を細かく切る
- 他の材料をミキサーにかける
- バジルソースを冷蔵庫で冷やしておく
- カペッリーニを1分長めに茹でる
- 茹でたパスタを氷水で締める
- バジルソースと和えて皿に盛る
- モッツァレラチーズを飾る
- ペコリーノ・ロマーノを削る
美味しくするコツとして、先にバジル、カシューナッツ、ニンニクを包丁で刻んでおく。「いや、なんのためのミキサーやねん」と真っ当なツッコミはわかるが、こういうひと手間で美味しくなる。包丁で切るのが面倒臭い人は、いきなりミキサーにぶち込んでも大丈夫。ムラの美学が味わえる。
材料を全部ぶち込んでペコリーノ・ロマーノを削る。
ミキサーをファイア。スムージーにする。
いい感じにスムージーになったら冷蔵庫で冷やしておく。
パスタを1分長めに茹でて氷水で締めたらボウルでジェノベーゼソースと和える。
お皿に盛ってモッツァレラチーズを飾る。
最後にペコリーノ・ロマーノの小雪を降らせて完成。カシューナッツをまぶしても美味しい🎶
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アボカドと生ハムの冷製ジェノベーゼパスタ
GReeeeNの『weeeek』のように、もういっちょ冷製ジェノベーゼの具材を紹介すると、生ハムとアボカド。彩りよし、味よし、気合いよしの三重奏。
アボカド生ハムのジェノベーゼの材料
- カペッリーニ:100g
- バジル:20g(1パック)
- カシューナッツ:20g
- ペコリーノ・ロマーノ:20g
- ICONOのオリーブオイル:60ml
- 青森県産のニンニク:1片
- アンチョビ:1フィレ
- 生ハム:1袋
- アボカド:1個
材料は基本的に同じ。ジェノベーゼのためにタジャスカ種は無理という人にお勧めが ICONOのフルーティーのオリーブオイル。クセが少なくフルーティーなのでジェノベーゼの味を邪魔しない。
アボカド生ハムのジェノベーゼのレシピ
- 材料を細かく切る
- 他の材料をミキサーにかける
- バジルソースを冷蔵庫で冷やしておく
- カペッリーニを1分長めに茹でる
- 茹でたパスタを氷水で締める
- バジルソースと和えて皿に盛る
- アボカドと生ハムを飾る
- ペコリーノ・ロマーノを削る
作り方は以下同文。
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伝統のジェノベーゼパスタ
今さら感あるが、伝統的なペスト・アッラ・ジェノヴェーゼ。温かいほう。伝統を再現するために必要な具材がこれ。
ただし、ペコリーノ・ロマーノとタジャスカ種のオリーブオイルは持ってない人が多い。だから今回は普通のオリーブオイルとチーズで再現する。
伝統のジェノベーゼパスタの材料
- リングイネ:100g
- バジル:1パック
- ジャガイモ:30g
- インゲン:2本
- オリーブオイル:50g
- 松の実:15g
- グラナ・パダーノ:15g
- ニンニク:1片
できればジェノベーゼパスタには平打ち麺のリングイネを買ってほしい。イタリアでは魚介にはリングイネが基本。ジェノヴァは港町なので海の感じが出て爽やかな風が吹く。チーズはペコリーノだけだとしょっぱいので、グラナ・パダーノと半々で作ることが多い。オリーブオイルは、できるだけフルーティーなもの。スパイシーなものはバジルと喧嘩してしまう。
伝統のジェノベーゼパスタのレシピ
- リングイネを茹でる
- ジャガイモをブロック状に切る
- インゲンも食べやすいサイズに切る
- ジェノベーゼソースをブンブンチョッパー
- 7分前にジャガイモを入れる
- 3分前にインゲンを入れる
- 茹でたパスタをボウルでソースを混ぜる
ジャガイモは7分間、インゲンは3分間リングイネと一緒に茹でる。今回はクイジナートではなくブンブンチョッパーを使う。伝統のジェノベーゼは大理石のすり鉢だが、そんなん無い。フライパンで熱さずボウルで和えるのは火を入れるとバジルの風味が飛ぶから。これも重要なポイント。
インゲン豆は三等分、ジャガイモはピーラーで皮を剥いて食べやすい大きさにカット。
松の実やニンニクも刻む。なんのためのブンブンチョッパーやねん、とツッコむ人はそのまま放り込んでよし。細かく刻んで援護射撃したほうがムラができにくいし刃も傷まない。バジルは飾り用を1枚残して茎も刻んで入れる。落合シェフが言ってた。日本のバジルの茎は柔らかいし、香りが強いから入れないともったいない。
バジル(茎も)、松の実15g、チーズ15g、ニンニク、オリーブオイルを50mlをブンブンチョッパーに入れてブンブンチョップする。
こんな感じに粗めでOK。このほうがシャリシャリ感があって良い。
茹でたリングイネ、インゲン豆、ジャガイモとバジルソースを混ぜる。バジルの香りを飛ばさないように火は入れない。
皿に盛って完成。チーズを削ってもオリーブオイルを回しかけてもいいが、まずはジェノベーゼソースの風味を楽しんでほしい。
ジェノヴェーゼパスタには白ワイン。爽やかさとあったかさ。食べ終わったあとの少しの切なさ。フジファブリック『若者のすべて』
伝統のジェノベーゼパスタの道具
【裏技】ジェノベーゼは春菊でも作れる
ちなみにジェノベーゼはバジルじゃなく春菊でも作れる。しかも芸能人格付けチェックをやれば絶対に間違えるほど味がそっくり。バジルがないときは春菊でジェノベーゼ。
冷凍パスタ、レトルトのジェノベーゼ
時間も材料もないときはレンチンの冷凍ジェノベーゼ、もしくはレトルトのジェノベーゼソースで万事解決。
日清もちっと生パスタ(冷凍)
日清もちっと生パスタには、ちゃんとジャガイモとズッキーニが入っている。なんと麗しい仕事。
この味が300円未満はコスパ凄すぎ。チンして一瞬の夏。もちろん、バジルから作るジェノベーゼとは風味も別物だが、冷凍ジェノベーゼも十分に美味い。
eatimeパスタソース
マルエツ、カスミ、マックスバリュの食品3社が開発したプライベートブランド。「eat」と「time」を合わせて「eatime」。ジェノベーゼに必要なバジル、ニンニク、チーズはもちろん、高級食材に入る松の実まで使っているのは凄い。
コロコロのじゃがいも。具があるのはうれしい。ゴッホ『ジャガイモを食べる人々』
バランスが良く普通に美味しい。あとはバジルのパンチがあれば完全にジェノベーゼ。これはジェノベーゼ風。レトルトでは十分っす。飲食店ですらバジルを使わず、ほうれん草や大葉など緑色の食材をブレンドしているくらいなので十分。バジルだけを使えば一日中においが残る。本当のジェノベーゼが食べたいならバジルを贅沢に使って自分で作るべし。
青の洞窟
満を持しての青の洞窟。出来合いのソースでは風味が足りず、逆に誤魔化そうと味付けが濃くなるものが多い。
ややジェノベーゼにしては色が濃い。バジルの風味を塩でカバーしようとしているのか、かなりしょっぱい。塩魔大王ですらファイティング・ポーズをとってしまう。塩分控えめの方は覚悟して召し上がりください。これくらいパンチがあるほうが好きな人もいるので食べる人を選ぶソース。
味をまろやかにするため、ひたすらチーズを削りまくりました。
ジェノベーゼソースの味が濃いので緩和するためにショートパスタが最高。これで丁度いい塩梅になる。フジッリと組み合わせるとかなり美味しい。
最後までご覧いただき、あリガトーニ。