マーティン・スコセッシの映画『グッドフェローズ』でマフィアのヘンリーが「マリナーラのソースがケチャップになってしまった」と言う。かつての隆盛と落ちぶれた現在を対比させた秀逸なセリフだ。グッドフェローズは「信頼できる仲間たち」という意味だが、パスタにおいて絶大な信頼を誇るトマトソースがマリナーラ。
マリナーラの意味・文化
マリナーラとはトマトをベースにしたソースの種類。基本材料はトマト、ニンニク、オリーブ・オイル、オレガノまたはバジル。マリナーラ(marinara)は「船乗り」の意味。イチローが大活躍したシアトル・マリナーズも「船乗りたち」。ナポリ生まれのソースである。マリナーラの由来は諸説ある。ナポリの船のコックが発明したからという説。長期の船旅にも保存が効く材料を集めて作ったパスタとされる。もう一つ、ナポリの船乗りの妻たちが彼らの海からの帰宅のために準備していたソースという説もある。ナポリの長期の船旅を支えた文化をもつソース。
マリナーラはパスタの種類ではなく、ピッツァなどにも使われるソースの名前。マルゲリータより歴史が古い。チーズは焼くと保存がきかないが、マリナーラは何日か置いても食べられる。まさに船乗りを支えたソースである。
ペスカトーレとの違い
マリナーラが「船乗り」の意味に対し、ペスカトーレは「漁師」。魚を獲る仕事であり、船を運ぶ船乗りとは異なる。ペスカトーレは漁師が売れ残りの魚や売れない雑魚、魚のアラをパスタにしたものであり、マリナーラは長期保存の効く食材を生かしたトマトソースの種類。ペスカトーレはパスタの種類、マリナーラはソースの種類。そしてマリナーラは保存がきくようにするため具材は使わない。
アラビアータとの違い
アラビアータとの違いがわかりにくい人もいるが、アラビアータは「怒りん坊」。材料はマリナーラと似ているが、アラビアータは辛さが主役。マリナーラはオレガノが入り、あっさりした味わいが特徴。アラビアータは唐辛子(ペペロンチーノ)が主役。
王道のマリナーラ
マリナーラの材料・食材
- セタロのリングイネ:100g
- コッポラ社のトマトソース:100cc
- カラブリア産の唐辛子:1本
- 青森県産のニンニク:1片
- アンチョビ:1フィレ
- 乾燥オレガノ:少量(完全感覚Dreamer)
- イタリアンパセリ:お好みで(無くても可)
マリナーラを演出するのはアンチョビとオレガノ。特にオレガノは家庭にない人も多いが、ぜひ買って欲しい。これがないとマリナーラ感が100倍薄まってしまう。本来マリナーラにはカラブリア唐辛子は使わない。が、あったほうが絶対音感として美味い。
海のパスタには「リングイネ」
海のパスタを作るときスパゲティは「リングイネ」を使う。リングイネ(lingua)は断面が楕円形のロングパスタ。由来はイタリア語の「小さい舌」。リングイニとも呼ばれる。日本ではジェネベーゼ専用のパスタと言われるが、イタリアでは魚介系に使うほうが主流らしい。平たい形状なので、トマトなどソースとの絡みが良い。船の帆をイメージする形なので、海のパスタにはリングイネを使いたい。
大好きな映画『レミーのおいしいレストラン』の主人公の名前がリングイニだった。
リングイネは「セタロ」
リングイネで使ってほしいのが「セタロ」。ナポリにある小さな村で1939年創業。ナポリの風で24時間から120時間をかけて乾燥させ、「パスタの計量」「袋詰め」「袋の口のハトメ留め」の仕上げ工程も手作業で行うこだわりぶり。文化であり芸術であり儀式とも呼べる時代に逆行した手間の工程は「奇跡のパスタ」と呼ばれる。情愛が込められた世界にひとつだけの「手作りパスタ」。モチモチの食感がソースをよく合う。リングイネはマンチーニも美味しいが、セタロを愛用している。
マリナーラの作り方・レシピ
- ニンニク、イタパセはみじん切り
- アンチョビ、唐辛子を加える
- ニンニクが色づいたらトマソーを入れる
- ソースが赤から朱色(オレンジ)になるまで煮詰める
- パスタが茹で上がればトマソーと絡める
- 皿に盛ってイタリアパンパセリをかける
- 最後にオレガノを振りかけて完成
作り方は小倉シェフ。アンチョビを入れるとニンニクの焦げつきが速くなるので注意。オレガノはトマトソースを入れるとき一緒に加えてもOK。量は完全感覚Dreamerで。最後のフィニッシュは火力を最大にして一気呵成にマリナーラといこう。
ニンニク、イタリアンパセリはみじん切り。このときイタパセの茎は捨てない。旨味になるので使うことで美味しくなる。もしイタリアンパセリの茎を捨てている人を見たら「あなたは人生を損している」と言ってやろう。イタパセの茎はグッドフェローズ。
ニンニク、イタリアンパセリの茎、カラブリア唐辛子、アンチョビを入れてオン・ファイヤー。沸騰するまで強火、オイルがブクブク泡立ってきたら弱火に落とす。ギャップ萌えが美味しいパスタの秘訣。
ニンニクがボディビルダー色になるまで炒める。
ニンニクがマッチョマン吉田正尚になってきたらトマトソースを入れる。
赤いトマトソースがSMAPやGReeeeNの名曲「オレンジ」の色になるまで煮詰める。
茹で上がったリングイネを入れてマンテカトゥーラ(鍋を振る)
火を止めてイタリアンパセリの葉を降臨。これがないとマリナーラ物語は完結しない。
お皿に盛ったらオレガノを擦りながら振りかける。遠慮せず、たっぷり振りかけて完成。スコセッシ監督もグッドの親指を立てるマリナーラの完成。
↓↓マリナーラの食材↓↓
マリナーラ(ワンパン)
マリナーラはパスタ鍋で麺を茹でなくてもワンパンで作れる。ソースの旨味やキレは少し落ちるが、十分にマリナーラ感は味わえる。洗い物など面倒くさいときはおすすめ。
マリナーラ(ワンパン)の材料
- パスタ(なんでもOK):100g
- コッポラ社のトマトソース:100cc
- 青森県産のニンニク:1片
- ケーパー:10粒(お好み)
- 乾燥オレガノ:3つまみ
- イタリアンパセリ:お好みで(無くても可)
- 水:150cc
パスタは細麺でも太麺でもなんでもOK。ワンパンで茹でるので10分以内の麺がおすすめ。ちなみに今回はガロファロの1.7mmを使った。10分茹で以上のパスタはフライパンで長時間も茹でると麺がボロボロになりやすく、水分も時間切れでなくなってしまう。トマトソースはトマト缶でもOK。必須はオレガノ。
マリナーラ(ワンパン)のレシピ
- ニンニクをみじん切りにする
- 材料を全部フライパンに入れる
- 水150ccを加えて沸かす
- パスタを茹でる
- 皿に盛って追いオレガノ
- イタパセがあれば乗せる
鬼ごとく簡単。ニンニクをみじん切りにして材料を全部ぶち込む。
水150ccを加えて混ぜてソースを作り、強火で沸騰させる。
パスタを投入し、中火で煮詰める。火が強すぎると、すぐに水分が飛ぶぞ!(長州力)煮汁が少なくなってきたら水を少量だけ足す。時々パスタを混ぜることを忘れないように。放置プレーはいかん。
皿に盛って追いオレガノを忘れないように。
↓↓マリナーラ(ワンパン)の食材↓↓
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【応用篇】牡蠣のマリナーラ
マリナーラが「船乗り」の意味なので、マリアージュする服食材は魚介でいきたい。オイル系・和風・クリーム系、トマト系とオールマイティに合うのが牡蠣。「今日は牡蠣のマリナーラをたべよう」なんてつぶやくだけで1日がオシャレになる。
牡蠣のマリナーラの具材・食材
- セタロのリングイネ:100g
- 牡蠣(加熱用):5〜7個(お好みで)
- コッポラ社のトマトソース:90c(大さじ3ほど)
- カラブリア産の唐辛子:1本
- 青森県産のニンニク:1片
- アンチョビ:3フィレ
- 乾燥オレガノ:少量(完全感覚Dreamer)
- イタリアンパセリ:お好みで(無くても可)
具材が多いほど、ソースの味がボケてしまうのがパスタの奥深いところ。ただし、牡蠣の存在感は強調したいので、5〜7個がおすすめ。アンチョビは3フィレとやや多め。小倉シェフは3個だけにしていた。これもパスタはセタロで。牡蠣のマリナーラこそセタロで。大事なとこなので2回言いました。
牡蠣のマリナーラの作り方・レシピ
- ニンニクはみじん切りにし、オリーブオイルに投入
- アンチョビ、カラブリア産の唐辛子を加える
- ニンニクが色づいたらトマトソースを入れる
- トマソーの直後に牡蠣を入れる
- パスタが茹で上がればフライパンでソースと絡める
- 皿に盛ってイタリアパンパセリをかける
- 最後にオレガノを振りかけて完成
小倉シェフは生食用の牡蠣を使うが、旨みが弱いので加熱用を使いたい。牡蠣のクセに負けないようにニンニクはみじん切り。強い火で牡蠣を焼いてしまうと硬くなるので、トマトソースのお風呂の上でじっくりボイルするのがポイント。パスタと絡める最後の一瞬の夏だけ火力を最大にして熱々のマリナーラを作りましょう。
小倉シェフは牡蠣の下処理をしなかったが、片栗粉と塩をまぶして2回洗うほうが良い。洗った牡蠣はバットにキッチンペーパーを敷いて水分を取る。
他の工程は基本のマリナーラと同じ。
↓牡蠣のマリナーラの食材↓
ふきのとうのマリナーラ
以前紹介した「ふきのとうのカルボナーラ」に続いてマリナーラを紹介。カルボナーラより手間がかからず、ふきのとうの処理もいい意味で雑。ぜひ食べ比べてほしい。他にも、ふきのとうはサルサ・ヴェルデにしたり、イカ墨のパスタに入れたりと応用が効きまくるマルチロール。ぜひ試してみて欲しい。
ふきのとうのマリナーラの材料
パスタの太さ、ふきのとうの個数は自由行動。コツは美味しい材料を使うことくらい。
ふきのとうのマリナーラの作り方
- ニンニクはスライスし、オリーブオイルに投入
- アンチョビ、カラブリア産の唐辛子を加える
- ニンニクが色づいたらトマトソースを入れる
- ふきのとうを切りはじめる
- ソースが赤色から朱色(オレンジ)になるまで煮詰める
- パスタが茹で上がる直前にふきのとうをフライパンへ
- パスタが茹で上がればフライパンでソースと絡める
- たっぷりのオリーブオイルを回しかけて混ぜる
- 皿に盛って完成
ニンニクが色づく直線でトマソーを投入。ソースは赤ではなく朱色(オレンジっぽくなるまで煮詰める)
ふきのとうは切った瞬間から風味が逃げていくので、トマトソースを煮詰めている間に親の仇のように切り刻む。
ふきのとうをソースに入れるのはパスタが茹で上がる直前。MajiでKoiする5秒前 by広末涼子。
パスタとソースを絡ませたら火を止めてオリーブオイルをたっぷりプリプリ回しかける。遠慮はNG。プリンセスプリンセスもびっくりするくらいの量でいこう。
見た目も美しい、ふきのとうのマリナーラの完成🎶
↓↓ふきのとうのマリナーラの食材↓↓
牡蠣のアラビアータや牡蠣ロンチーノもおすすめ
マリナーラよりさらにクセモノのアラビアータと牡蠣。そこに春菊という、またまたクセモノが入るバトルロイヤル。
ボンゴレを超える牡蠣のペペロンチーノ。牡蠣ロンチーノもお試しあれ。
パスタは道具にこだわるほど美味しくなる、楽しくなる、愛おしくなる
最後までご覧いただき、あリガトーニ。