パスタの聖書

パスタのレシピ、文化を公開。家庭料理で唯一プロの味を超えられるのがパスタ。

トマトソースの種類とパスタのセレナーデ〜リコピン大魔王に捧げる

トマトとパスタのセレナーデ

左からトマト缶、トマトソース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトケチャップ

パスタを作りに立ちはだかる壁がトマトソース。トマト缶なのかトマトピューレなのかトマトペーストなのか。同じトマトだが、量も調理方法も全然違う。「とりあえずビール」感覚でトマト缶を使う人は多いが、それでは真に美味しいパスタに登頂できない。トマトソースを制する者はパスタを制する。

トマトとパスタの恋愛遍歴

パスタ=トマトスパゲッティと考える人は多い。リコピン大魔王の自分もそうだった。トマトはダメだがトマトソースのパスタはイケる人も多い。今ではパスタと夫婦関係にあるトマトだが、実はパスタとトマトのマッチングの歴史は最近。パスタが生まれたのは古代ローマ帝国にまで遡るが、一般家庭に普及したのは16世紀。そしてパスタと並走するようにトマトソースも誕生する。そもそもトマトが栽培されたのが16世紀のメキシコであり、ヨーロッパに渡ってきたのが1519年。パスタに使用されたのも1554年の医者アンドレア・マッテイオーリがトマトを使ったソースを作ったことが始まりと言われてる。17世紀には一般家庭にトマトソースが普及した。パスタとトマトソースは同時代ゲームで歩んできた。

トマトはなぜ美味しいのか?

トマトとパスタのセレナーデトマトには甘味、酸味、グルタミン酸などの旨味成分が豊富に含まれまる。しかし、これがパスタにおける諸刃の剣。グルタミン酸のパワーがなかやまきんに君より強ぎて、いろんな味を殺してしまう。つまりトマトソースのパスタを作るときのポイントは2つ。

  1. トマトソースを入れすぎない
  2. 他の食材を多めに入れる

要はトマトソースのフェラーリ並みのジャジャ馬パワーを抑えるということ。せっかくの旨味も、過ぎたるはなお及ばざるが如し。このポイントに注意してトマトパスタ生活を彩ろう。

リコピン」とは

リコピン大魔王を自負してしている当ブログ。リコピンとは赤色のもと。メインは色素だが、抗酸化作用もあり、トマトの酸味にも一役買っている。トマト=リコピンと言い換えてもいいほどの存在感。鈴木一朗イチローのようなもの。

トマト缶

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ここから色んな種類のトマトソースを紹介しよう。代表的なものがトマト缶。コンビニやスーパーで400g100円位で売っている。その正体は「生のトマトを加熱して水煮にしたもの」。トマト缶が登場したのは20世紀と新しい。一説によると実業家フランチェスコ・チリオが世界初のトマト缶を開発したと言われる。1909年にはムッティ社がトマト缶を発売した。

トマト缶,ピノッキオ

お気に入りのピノキオのトマト缶には「トマトピューレづけ」と書かれている。大阪のPONTE VECCHIO(ポンテベッキオ)の山根大助シェフも使っている。トマトの塊とジュースの味に差がないものは良いトマト缶。悪いものはホールトマトやカットトマトとトマトジュースの味がバラバラ。ピノキオは実を食べてもジュースの部分も同じ味。

ホールトマトとカットトマトの違い

ホールトマトとカットトマトの違い

ホールトマトはトマトが丸ごと入ったもの。種も入っておりコレが旨味。食感を嫌って種をとる人は角切りになった「カットトマト」がおすすめ。そこまで味の違いはわからないので食感などお好みでOK。トマト缶のおすすめはピノキオ。パッケージが可愛い。

トマト缶が活躍するパスタ

トマトソース

トマトソース,コッポラ

トマトソース系のパスタを作るとき最も圧倒的に重宝するのは大は小を兼ねる。コッポラ社のトマトソース。『ゴッドファーザー』『アウトサイダー』『地獄の黙示録』のフランシス・フォード・コッポラ監督がプロデュースするソース。

トマト缶との違い

トマト缶とトマトソース

トマト缶との違いは様々な旨味を援護射撃していること。ぶっちゃけ言えば、コッポラのトマトソースがあれば、茹でたパスタに混ぜるだけで美味しい。コンビニで高いパスタを買う必要ないし、レトルトのトマトソースは不要。

コッポラ社のトマトソース

モンタナーラはマッシュルームの旨味が加わっており、まろやかな旨味。クラシッコはためねぎ、バジルの旨味があるのでキレがある。そんなに違いはないのでお好みで。爆買い必死のトマトソース。

コッポラのトマトソースが活躍するパスタ

トマトペースト

ムッティ、トマトペースト

トマトペーストはトマトを裏ごしし、煮詰めて濃縮したもの。本来、肉料理や煮込み料理に旨味を足す用途で使われる。

ムッティはナポリアマルフィのある南イタリアカンパニア州の会社。1899年、ムッティ兄弟が設立した。チューブ式のトマトペーストはムッティが発祥と言われている。ムッティのトマトペーストは5.5キロものトマトから1キロまで濃縮している。

トマトピューレとの違い

トマトピューレ、トマトペーストの違い

ムッティのトマトピューレ(パッサータ)との違いは濃さ。トマトピューレ(パッサータ)は2キロのトマトを1キロに濃縮したもの。一方のトマトペーストは1キロのトマトペーストを作るのに5.5キロも使っているので圧倒的に濃い。トマトピューレはパスタソースとして丸ごと使われ、トマトペーストは隠し味に少量使う場合が多い。

トマトペーストが活躍するパスタ

トマトピューレ

トマトピューレ

トマトピューレ(パッサータ)は完熟トマトを裏ごしして煮詰めたもの。ザルで濾してトマトの皮と種を取り除くので食感がなめらか。カッコいい呼び方で「パッサータ・ディ・ポモドーロ (裏ごしトマト)」。イタリアの料理人はトマトピューレではなく「パッサータディポモドーロ」と呼ぶ。舌かみそうになるのでトマトピューレでいいっしょ。

トマト缶との違い

トマト缶、トマトピューレ

トマト缶はピューレ(トマトをつぶした物)漬けになっているもの。トマトピューレはトマト缶よりトマトの旨みが凝縮され、さらに酸味が少ない。2キロのトマトから半分の1キロを抽出。トマトピューレはトマト缶と違って煮詰めなくていいのでガス代・IH代も節約できる。

トマトピューレが活躍するパスタ

トマトケチャップ

トマトケチャップ

ほぼナポリタン限定で使うトマトケチャップは、トマトピューレに砂糖・食塩・酢・スパイスなどを加え味つけしたもの。日本料理の5つの調味料「さ・し・す・せ・そ」の要素が全部入っており、寺山修司が『トマトケチャップ皇帝』を書いたのも納得。他のトマトソースに比べて糖分が多く、甘味が強い。だから子どもを虜にする。

ふつうのケチャップ

ふつうのケチャップ

鳥羽周作シェフ監修、4時間以上、岐阜県産トマトを煮詰めることで瓶に閉じ込めたケチャップ。

ふつうのケチャップ

原材料はトマト、はちみつ、玉ねぎ、醸造酢、にんにく、食塩、香辛料。ケチャップ特有のキツさがなくマイルド・オブ・マイルド。寺山修司が食べたらトマトケチャップ皇帝の続編を書いたに違いない。プレゼントしたら、めちゃくちゃ喜ばれる。

トマトケチャップが活躍するパスタ

トマトパスタの調味料の違い一覧

トマトとパスタのセレナーデ

  • トマト缶:生のトマトを加熱して水煮
  • トマトソース:トマトに色んな旨みを加算
  • トマトペースト:トマトをギュッと凝縮
  • トマトピューレ:トマトを裏ごしして煮詰
  • トマトケチャップ:トマトピューレに味つけ

ここまで分かれば立派なリコピン大魔王。トマトパスタの調味料の違いを理解して最強のパスタを作ってほしい。

最後までご覧いただき、あリガトーニ